2007年11月30日金曜日

interview with RIP SLYME

前作『EPOCH』から約1年ぶりに、待望の6thアルバム『FUNFAIR』がいよいよリリースされる。“移動遊園 地”との意味を持つ今作は、まさに遊園地に一歩足を踏み入れると誰もが童心に戻り、無邪気に楽しむことができる、ワクワク度120%の作品となっている。 それにしても、RIP SLYMEの遊園地には、さまざまなアトラクションが満載! ヒップホップを基軸にしつつも、一括りではカテゴライズできないジャンルレスな15曲、15 個のアトラクションが収録されており、いい意味で、今作は前作以上に雑多な感じ、バラエティ色がより色濃くなったアルバム作品といえるだろう。今回はメン バーを代表して、PESとRYO-Zの2人にインタビュー。これぞエンターティナーな、息のあった2人の爆笑トークをお楽しみあれ。

■アルバムを聴き終えて、まず思ったのが改めてRIP SLYMEすごいなと。

RYO-Z・PES:いやいやいやいや。とんでもございません。

■そんな謙虚な。とにかく聴いていて心地よかったというのが、素直な感想なんですけど。今作の制作は、いつぐらいから取り掛かられていたんですか?

PES:4月ぐらいからちょろちょろっと動きはじめて、夏には大体出来上がってましたね。

RYO-Z:今回は通常よりも立ち上げが早かっただけに、締め切りも早かったんですよ。でも、それを可能な限り伸ばしていって。で、結局、ギリギリになったんですけどね(笑)。

■でも、そこまで早い進行って珍しくないですか?

PES:この夏に出したシングルの「熱帯夜」は、昨年のタイミングでできていたし、アルバム曲の「I・N・G」なんか も、昨年の「ブロウ」というシングルのときだし、「Tales」も12月ぐらいに作った曲で。すでに今年始まった時点で3曲が出来上がっていたから、後は イメージ固めぐらいで。

RYO-Z:アルバムタイトルの『FUNFAIR』も、早い段階でDJ FUMIYA君が遊園地っていうワードを出してきたんで、それに乗っかって、じゃあ、“移動遊園地=『FUNFAIR』”にしようかと。作るうえでの指針 として、そういうのがあると早いですよね。そこから逸脱しないように向かっていけますから。

■まさにタイトルの『FUNFAIR』は、RIP SLYMEを象徴するタイトルですね。バラエティに富んだ選曲、構成になってますし。

RYO-Z:でも、実際「ジェットコースター」とか「メリーゴーランド」っていう曲があるわけではないんですけど(笑)。1枚聴いたムードがそういう風に感じてもらえるようにと思って。

PES:最初の頃は、アッパーなテンポのものが多かったので、スローな曲も入れようと、それぞれ作ってこようよという話になったら、そのあとのミーティングで、案の定スローな曲ばかりになって(笑)。

RYO-Z:まさにシーソーゲームだね(笑)。今回は見極め的なことも逆に早い段階で、ジャッジも淘汰されていって。で、かなりたくましい、強い曲たちが残っていき、それらがギュッと詰まったのがこのアルバムと。

PES:最終的に、いろんな楽曲がバランスよく入ったよね。でも、相変わらず前のアルバムから入れようって入らなかった曲があって。

RYO-Z:あ~~! あれは手出しちゃいけないね。

PES:パンドラだね(笑)。

RYO-Z:いっそのこと「パンドラ」って曲名にしたいぐらいだね(笑)。

■入らなかった理由はどうして? 個性が強すぎるとか?

PES:トラック力も結構あるし、悪くはないんだけど、今回も残念ながら落選で。でも、ほっといたら危ないから、できるだけ早く出したほうがいいんだけどさ(笑)。

PES:でも、もしかしたらワインみたいに熟成される曲かもしれないし。

RYO-Z:いい感じのビンテージ感が。作ったのは2006年だから、ボジョレーヌーボだったら、今頃飲み頃なんだけどね(笑)。

■また今作は曲順も絶妙ですよね。もう、はじまりから一気に世界に引き込まれていって、思い切りアトラクションを楽しんで、最後はちょっと切なさも感じられるという。起承転結がハッキリしていて。

RYO-Z:実は最初は、イントロダクションも6パターンぐらいあって。そこから強い2パターンに絞られて、で、結構僕 とPES君はもう1つのほうがいいんじゃないの? って言っていたんだけど、いろいろ話し合って、これに落ち着いて、結果よかったなと。もう一個は、 ちょっと怖い感じだったんだよね。華やかさはどっちもあったんだけど、CD壊れたんじゃない? っていう、ガチャガチャガチャってなるシーケンスだったん で、オープニングから混乱を呼ぶんじゃないかということで、最終的に聞きやすさをとったという。

■今作はそういう意味では、スリリングな楽曲も多いですね。ちなみに楽曲ごとにみなさんがイメージしてるアトラクションみたいなものって、あったりするんですか?

PES:これは何ニーランドの何ブの海賊とか、何ラッシュマウンテンとか。何急ハイランドとか(笑)。

RYO-Z:何ニーランドって(笑)。

PES:最初は乗り物っぽいとか、これはなんであれはなんでってなんていうのもあったけど、“遊園地”ってテーマの時点で、「熱帯夜」「I・N・G」「Tales」の3曲が出来てたんで、そんなにアトラクションにしばられることもないだろうって。

■今作にはモンパチ(MONGOL800)さんとのコラボ作品「Remember」も収録されていたりと、アルバムならではの面白い試みも、たくさんなされていますね。

RYO-Z:ILMARI君がモンパチのメンバーと仲良くなって、「何かやれたらいいね~」的な感じで、2人でデモテー プを作ったりしてたんですよ。で、それを俺らにも聴かせてくれって、フライング気味で聴いてみたらこれはいいぞ、ぜひアルバムに! みたいな。それでモン パチのメンバーに東京にきてもらって、駆け足で作っていって。

PES:あと、今回は初めてフィメールのラッパーの子とか、RIPじゃない人たちが作った曲も混ざっていたりして。俺たち自身もフレッシュな感覚を味わえたし、聴いている人も新鮮じゃないかと。俺たちらしくて俺たちらしくない、俺たちらしくないのに俺たちらしいみたいな。

■ちなみにモンパチさんが東京にきたときは、みなさんでおもてなしをされたんですか?

PES:おもてなしをしようと思ったら、すぐ清作くんにもてなされました(笑)。

RYO-Z:清作くんのほうが東京事情に詳しくて。面目ない感じでしたね(笑)。

PES:おっしゃれ~なバーに連れて行ってもらってね、清作くんはこんなところでお酒飲んでるんかい? 

RYO-Z:いいね~。僕らもこれからそうしようって。

PES:名刺なんかもらってきちゃったりして(笑)。

■皆さんこそオシャレなバーや、芸能人御用達の隠れ家みたいな店に行かれてそうなイメージがありますけど。

PES・RYO-Z:いやいやいや。

PES:僕は最近、もっぱら家飲みなんですけど。芸能人がたくさんいるお店なんて行ってみたいもんだね~。

RYO-Z:触れてみたいもんだね~。できれば写真を1枚!(笑)。

PES:本当だよ。この間、勝どき橋にあるデニーズに行ったとき、このデニーズおしゃれだねって言ってたぐらいだからね(笑)。

RYO-Z:僕らはデニーズレベルだからね(笑)。おかわりコーヒーだけで何時間もねばりますからね(笑)。

■いい意味で、バリエーション豊富な料理があるデニーズと今作、RIP SLYMEの楽曲って共通するものがあるんじゃないかと。誰もが気軽に楽しめるという部分でも。今やトップアーティストのみなさんにも関わらず、そういう感覚を今でも持ちあわせているところが、素敵だなと思いますよ。

RYO-Z:まあ、言ってもワインは飲みますけど(笑)。

PES:RYO-Z君おしゃれやね~。やるね~。

RYO-Z:でも、そのワインはコンビニで買ってくるんだけどね(笑)。田崎真也コレクションはおすすめ! ほんとトップアーティストの仲間入り果たしたい! なのに、なかなかどうして。

PES:ギリギリぶっちぎらないところにいるのが、俺らだよね(笑)。

RYO-Z:結局飲みも5人で集まっちゃったりして(笑)。まさにそれを重ねて、このアルバムですから! 酒と男と女と遊園地ですから!(笑)。

■でも、そうはいっても、ラグジュアリー感、おしゃれ感がちゃんとある、親しみやってやすいんだけど、下町の遊園地って感じとは違うかなと。

RYO-Z:僕、完全に下町生まれ、下町育ちなんで。セレブっぽい奴、友達にいないですし(笑)。

PES:いてもただの顔見知り(笑)。まあ、「熱帯夜」のPVとか、「I・N・G」でネクタイなんかしめちゃったりして、エグゼクティブなムードを出しちゃったりはしてるけど。

RYO-Z:それはあるね。でもさ、毎回そうだけど、今みたいな出来立てほやほや期って比較的、まだまだあれやれたら、この曲こうできたのにな、っていうのがあるじゃん。で、しばらくしてライブとか、こうしたインタビューを通して、曲がどんどん自分たちのものになっていって、曲に対する解釈も深まっていくんだけど、今回のアルバムは、出来立てほやほや期の今の段階でも、すでにみんなのうなずきが“う~ん”ってすごく大きいんだよね。まあ、時間かけて作った甲斐があるのかなと。

■現時点で、みなさんにとって今作は最高傑作だと。

RYO-Z:「ハイ!」とここは言い切っときましょう。でも、前のアルバムの立場いつも考えちゃうんですけどね(笑)。

PES:末っ子は一番かわいいからね(笑)。

RYO-Z:いいね~その表現。まあ、どの子もかわいいことには変わりないんだけど。

PES:でも、唯一長男だけは…

RYO-Z:断然出来悪いな(笑)。

■でも、今作は今のみなさんの愛情をたっぷりと受けて…

RYO-Z:すくすくと。

PES:正味、一番金もかけて育ててますからね(笑)。

RYO-Z:手塩にかけて。ビールを混ぜて、おいしいお肉に仕上げました。

PES:牛かいな(笑)。

■相変わらず音を楽しんでいるなっていうのが、今作からも伝わってきたのですが。音楽を作る作業って、産みの苦しみがある人が多いと思うんですけど、今回はいかがでしたか?

PES:多少はありましたけど、今回は比較的安産でしたね。まあ、早くから力んだからね(笑)。いつもは時間に追われて、スケジュールを先に決めてから、アルバム作業に取り掛かるんだけど、今回はかなり前から準備してたこともあって、結構同時進行でいけたというか。とはいっても、最後はギリギリだったけどね。

■詰めの段階、最終作業で時間がかかったと?

PES:ずっとダラダラしていたのが、最後の一週間で一気にどうにかしようと。夏休み(の宿題)と一緒ですよ(笑)。

RYO-Z:俺なんて始業式から(宿題)スタートしたからね(笑)。夏休みは寝なくていいし、いつ起きてもいいし。そのころからずっと無計画な生きかたしてるな、俺(笑)。

■メンバーみなさん無計画派だったりするんですか?

RYO-Z:メンバーもみんなそんな感じじゃない?

PES:だね。

RYO-Z:でも、俺、結婚してるのに無計画はまずいよな(笑)。

PES:そうだよ。俺は無計画と豪語しても、誰にも迷惑かかんないからいいけど。

RYO-Z:家族計画っていうもんな~(しみじみ)。改めないとな。

PES:これから、これから。でもさ、前作に比べると、今回はみんなでミーティングしたりとか、コミュニケーションを密にとって、次に何をしようとか、計画性が若干出てきたよね。

■ちなみにつねに先陣きって提案されたり、召集される方はいらっしゃるんですか?

PES:そのつどそのつど、だよね。

RYO-Z:気づいた人が、これやっといたほうがいいんじゃねえって。

PES:例えば、SUさんだったらライブのことだったり、DJ FUMIYAだったら音的なこととか。今回は特にいい感じで、分業が進んでいたよね。

RYO-Z:よりほったらかし関係になってたよね。とにかく任せたことに関しては、根拠のない反論はしないという。

PES:「これ、何か嫌だじゃ」許さないよね(笑)。

■暗黙のルールみたいな(笑)。

RYO-Z:それはあったね。このアルバムを聴いた人も、とにかく根拠のない反論だけは許しませんので(笑)。まあ、無理に聴いてくださいとは言わないですけど、一回耳にしてくれたら、楽しめるんじゃないかと。

PES:あんま深く考えず、気軽に聴いて、自由に楽しんでもらえたらと思います。