パンク、ハードコア、ヒップホップ、ドラムンベース、エレクトロニカ、ラテンなどなど。さまざまな音楽要素を飲み込みながら、アルバムごとにガラリとそのサウンドを進化させてきたDragon Ash。ダブルミリオンを記録した1999年のアルバム『Viva La Revolution』で大きな注目を集めたときも、メディアへの露出は最低限。そんな独自のスタイルを貫き、音楽的にもスタンス的にも、常にオルタナティブな道を歩み続けてきた彼ら。2007年、デビュー10周年の記念すべき年に完成した7作目のアルバム『INDEPENDIENTE』。スペイン語で“孤高”を意味するタイトルが付けられたその作品は、まさにこの10年の歩みなくしては完成しなかった1枚だ。
■Dragon Ashは今年でデビュー10周年を迎えるわけですが、当初はKj+桜井誠+IKUZONEの3ピースバンドとしてスタートしたんですよね。
Kj:そうですね。もっと前はサク(桜井)とおれと、女の子がベースをやってたんですけど。で、いろいろあってサクとおれのふたりでドラムンベース(ドラム+ベース)になって。で、IKUZONEがベースで入って、(自分が)ギター&ボーカルをやることになって……。
■その後も、アルバムごとにサウンドやスタイルを発展させながら、7人編成のバンドとなる現在に至るわけで。そんな10年のなかで、“正直このときはピンチだった”っていう瞬間はありましたか? はたから見てると、『HARVEST』が出る前の時期がそうだった気がするんですけどね。ちょうど土下座の看板(※編集部注)のころとか。
桜井:あ~、懐かしいね(笑)。それより何より、『陽はまたのぼりくりかえす』を出して売れなかったら、“じゃあもう辞めよっか”って話になってたよね。
Kj:そうだよね。あっちのほうが全然ピンチだよね。完全に解散方向だったからね。あのときは危なかった、マジで(笑)。『Buzz Songs』がある程度売れたっていうか、一定のラインを超えたので、良かったっていうか。
■そういえば、『陽はまたのぼりくりかえす』を出してすぐぐらいのときに、それまで「ライブはキライ」って言ってたKjが、「初めてライブが楽しいと思った」って言ってたのを覚えてますね~。
Kj:ああ~。仙台のライブだったかな? あれ、普通に公園でやってる“祭り”だったんだよね(一同爆笑)。
桜井:大阪のライブでは『六甲おろし』のSEで出て、ドン引きされたからね(笑)。あのころ、“ブラボーナイト”ってイベントではもう、ダントツで人気なかったし(一同爆笑)。
Kj:いやもう、マジ任せてよ(笑)。“ブラボー~”はvol.3ぐらいまで出たからね。みんな卒業していくのにずっといっから(笑)。「またDragonいるなぁ」って(爆笑)。
※編集部注:『LILY OF DA VALLEY』(2001年)から、『HARVEST』(2003年)の間にリリースされる予定だった新作が完成せず、メンバー全員が謝罪の土下座をする巨大なビルボードが渋谷の駅前に登場した。
■ここまでの話からすると、やはりバンドのターニングポイントとなった作品といえば……。
Kj:やっぱり『Buzz songs』じゃないですかね。あと、『HARVEST』 かな。曲の作り方とかフォーマットとか、(今も)ベースにあるのは『Buzz songs』のときの感じだし。ライブで共感できるようになる曲をやり出して、共感してくれる人たちが増えて、ワンマンライブで充実した時間を過ごせるよ うになってきて。そのころからBOTSくんもバンドに参加するようになったし。いろんなことがあそこから良いふうに転がったっていうか。
■初期Dragon Ashのサウンドフォーマットが完成した1枚であり、今も多くのフォロワーが生まれ続けてる1枚でもありますしね。
Kj:うれしいことですよね。
■そんなふうに進化しながら歩んできたDragon Ashですが、日本の音楽シーンにおいてどういうスタンスにいると自分たちではとらえていますか?
DRI-V:同じようなバンドがいないっていうところで言えば、やっぱり特別なバンドだと思いますけどね。
ATSUSHI:純粋に、飽くなき追求をし続けてるバンドなんじゃないでしょうかね。(音楽性やスタイルは)いろいろ変わってきたと思うんですけど、Dragon Ashとしての太い柱は変わってないっていうか。
HIROKI:おれはもともとバンドに入る前から、カッコいいっていうか、日本の音楽シーンのなかでも、ハイクオリティーな音楽を作ってるバンドだなぁって思ってはいましたけどね。
BOTS:まぁ、 日本のチャート番組とかに出てくる人たちに比べて、テレビに出てないとか、露出が少ないっていうところでは、やっぱ異質なイメージがあるかもね。でも チャートの上位にいる人たちのなかにも、クリエイティブな志を持ってやってる人は超いっぱいいると思うし……。でもおれが思うDragon Ashの、主に降谷建志の作る曲のいいところは、日本人がやるとけっこうダサくなっちゃいがちなところを、すごくスマートに、カッコ良く、聴きやすくする 感じじゃないかなぁって。だから(露出が少なくても楽曲が)チャートに入ってくるんじゃないかなぁって思うんだよね。
桜井:紅白も出たことないしね(笑)。『Viva La Revolution』 が売れて、わりとあれはメディアが持ち上げて、みたいなとこがあったじゃないですか。別におれらが(積極的にメディアに)出たわけじゃなくて、結果的にあ あいう形になったと思うんですけど。でもそのあとも全然テレビとかにも出ないし、「何なの、この人たちは」みたいな。親からもそう言われ(一同爆笑)。だ からいまだに、「ヒップホップっぽいことやってる人たちでしょ?」って言われたりもするし。そのわりには、チャートとかをとおして一般リスナーの耳にも (新曲が)入ってたりして。まぁ、それはそれでいいんじゃないかと思いますけどね。
■そして、ついに7作目のアルバム『INDEPENDIENTE』が完成しましたね。今作でも、前作『Rio de Emocion』からの流れを感じる“ラテン”の要素が大きな役割を果たしていると思うのですが。
IKUZONE:別にこちとらラテンの血なんて流れちゃござんせんってことなんだけど(笑)、(演奏してても)イイなって思うから、自然と そうなったってことなんだろうね。リズム隊としては、求められるものは相当シビアではあるんだけど。でもそれはそれで別に毎度のことなんで、楽しんでやっ てますからね。
桜井:だってさ、アレンジとかは違うけど、昔の曲とかとけっこう共通点はある感じがするんだよね。使ってる楽器とかによってカラーがラテンとかに寄ってるだけであって。芯(しん)はそんなに変わってないんじゃないのって。
Kj:まぁでも、メロっぽい(メロディが立ってる)感じは確実にするよね。シングルほどじゃないし、もっとリズムを強調してるとは思うけど。
■“歌”が映える曲が多いですもんね。
BOTS:あと、『Rio de Emocion』以降、音が有機的になってきてると思うんだよね。
■てことは、音の質感的には『Rio de Emocion』である程度の基盤ができていたっていうことなんですかね?
BOTS:今回に関してはね。
■そういう意味でも『INDEPENDIENTE』は『Rio de Emocion』の延長線上にあるアルバムだとして、作り手として前作以上に飛躍したと思う点はどこですか?
桜井:それはもうね、アルバム買って聴き比べてもうらうのがいちばんですよね。決定的に違うからね(笑)。
BOTS:度肝を抜かれるからね(笑)。
ATSUSHI:覚悟しといたほうがいいと思うよ。
■ちなみに今回、前作にも参加されていた武田真治さんがサックスで、新たにフィーチャリングでケツメイシの大蔵さんが参加されてますよね。
Kj:今回ゲストはそのふたりだけですね。それ以上のフィーチャリングは(時間的に)できないっていう感じだったから。いやもう、全然アイデアもいっぱいあるし、いろいろやりたいとは思ってたし、思ってるけど、(時間的に)限界でしたね。
■それなら、ぜひそれを次のアルバムで実現してもらいたいところなのですが……。
Kj:うん、そうッスね。
■そして、そこへ続くDragon Ashの“今後”が、なるべく近いうちにスタートするといいなぁって思いますけどね。
Kj:それはどうでしょうね。それはちょっと、軽率な発言はできないなって感じですねぇ。
■Dragon Ashの“今”が反映されている点ではもちろんですが、『INDEPENDIENTE』は、日本のポピュラー音楽シーンにおいても、すごくハイクオリティーなアルバムだと思うんです。楽曲の構成といい、サウンドのセンスといい、もはや別格といってもいいぐらいに。
Kj:おお~っ。うれしい。ほめられたぁ(笑)。
■ほめてます(笑)。日本のメジャーシーンにおいて、『INDEPENDIENTE』=“孤高”の存在だなと改めて思える1枚というか。
BOTS:あれぇ~。
Kj:おおっ、すげー。おれ、マジやってて良かったぁ~。なぁ? サク! いや、マジでやってて良かったなぁ? デビュー前に切られそうになってたからなぁ(一同大爆笑)。
桜井:ギリギリ土俵際でしたからね。
Kj:おれはもう、「サクとでなきゃやれない」っつって。
桜井:ほんと、ヤバかったです(笑)。
■そんなことも乗り越えてきたからこそ今のDragon Ashがある、と(笑)。ところで、3月からは待望の全国ツアー「Dragon Ash Tour~DEVELOP THE MUSIC~」がスタートしますよね。久々のツアーはどんな内容になりそうですか?
桜井:うちのバンドは、アルバムを出すと(その際のツアーでは)ほぼアルバムの曲を全部やるというスタイルを貫いておりますので、また新し い形で(新曲を)お届けするという感じじゃないでしょうか。詳しくは見てのお楽しみですが。まぁ、そこらへんの意気込みはもう、うちの代表の千葉(DRI -V)から。
Kj:広報の千葉から……(小声で)猪(ちょ)突?
BOTS:ほら、今年はイノシシ年だし、(小声で)猪(ちょ)突猛……。
DRI-V:猛……“千葉”?
BOT今すぐ保存S:はい、猪(ちょ)突猛“千葉”いただきました! ということで、今年は猪(ちょ)突猛“千葉”の勢いで頑張っていきます。Dragon Ashでした~。
桜井:猪(ちょ)突猛“千葉”っつったら本当に行きたくなってくるよね!
Kj:間違いなくみんな来るよ(笑)。
2007年11月29日木曜日
interview with - Dragon Ash