2007年11月26日月曜日

Interview with - YUKI

 携帯電話のCMで流れる『ビスケット』とともに、そのキュートで元気な姿を久しぶりに見せてくれたYUKIが、8月8日、約1年ぶりとなるCDシングル『星屑サンセット』 をリリースした。YUKI初のドラマ主題歌となるこの曲は、TBS系ドラマ「パパとムスメの7日間」の主題歌としてオンエア中。かけがえのない大切な瞬間 が、キラキラと輝きながらエネルギッシュに駆け抜けるこの曲は、YUKIならではのポップさとせつなさを持ちながらも、これまでと違った肌触りを感じさせ る、YUKIの新たなスタート地点となる曲だ。


■『ビスケット』が配信されたと思ったら、あっという間に新曲のリリースですね。

YUKI:本当ですね。最近思うんですけど、自分が作りたいなと思う気持ち、作らなければいけない状況が目の前にあると、燃えちゃうタチみ たいです。それが、良くも悪くもインターバルがあまりなくやれているんです。だから、マイペースでやっているつもりなんですけど、けっこう止まらずにやっ ているみたいですね。この間もスタッフに、あまり私がゆっくりしているイメージがないって言われました。集中してやるときの切り替えが、たぶんすごいんで すね(笑)。


■この曲は、ドラマの主題歌ですが、曲はどういうふうに作り始めたんですか?

YUKI:主題歌のお話をいただいて、そこから曲を選んでいきました。ドラマのプロデューサーの方が、『ふがいないや』みたいに疾走感がある感じで、まだ青い果実のような歌がいいなというリクエストをしてくださったので、やりやすかったですね。


■ドラマの台本も先に読んでいたんですか?

YUKI:第1話の脚本と、原作の本をいただいて、原作を読んだあとに脚本を読んだら、そのまま上手にドラマになっていて、ちゃんと絵が見 えるようになっていたので、そこから歌詞は書いていきました。だから、かなりドラマに寄り添っていますね。でも、リクエストがありつつも、“YUKI”の シングルとして新しいものを作らないと私も納得いかないし、聴いている人たちも納得いかないと思うんです。そう思って、いちばん私の歌が響くところ、つま りメロディーがいいこと、という部分を重視しました。いいメロディーでありつつ、これは今まで私があまり歌ったことのないメロディーだと思います。


■ドラマのストーリーから、どういうふうに歌詞の世界を広げていったんですか?

YUKI:原作を読んだときにいちばん私が印象深かったのは、冒頭とラストの、パパが小さいころの娘のことを思うというシーンなんです。一 緒に海に行ったり、花火をしたり。娘の成長によって、どんどん家族は離ればなれになっていくんですけど、家族が共有し合っているものって何かなと思ったと き、夕焼けだったんです。夕焼け、花火、海。そういう一緒に見た風景なのかなと思ったんです。しかもそれは子どもが幼いころの、まだ家族が小さな集合体で いられるときの風景。でもそれは長かったようで、振り返ってみると一瞬なんです。夕焼けとか、流れ星とか、その家族との時間とか。この曲で書いているの は、そういう“一瞬のもの”なのかなと思います。


■『星屑サンセット』というのは、夕焼けが星屑のようにキラキラしているということなんですか?

YUKI:そうですね。「たったひとつの光」という言葉がサビにあるんですけど、10年、20年の間に通り過ぎていく流れ星というか、“願 いをかけたい!”と思う星や光は見逃してしまっていることも多いと思うんです。でも、大人になっていくと、それにすごく注意深くなっていく。子どものとき は自分のことで精一杯でまわりのことが見えないんですけど、大人になるにつれて、どんどん自分以外の人のことも、世界が広くなって見えていくんです。その ときに見つけられる光というのは、実は人生のなかに何回も出てこないと思うんです。


■それは具体的にいうと、どういうものなんですか?

YUKI:人生の大きな出来事に出合うときや、最愛の人に出会うとき。ターニングポイントっていうのかな。何年かに一度現れる希望の星。人 は、どんどん思いやりとかを覚えて、いい人間になろうと頑張っていくんだと思うんですけど、そういう努力をしている人にだけ見える光なんです、希望の光 は。


■そしてこの曲は、主人公の女の子が一生懸命走っているように、すごくキラキラしていますよね。それでいて、せつない部分もあったり。

YUKI:そうですね。この女の子が走らせてしまったんです。何かを成し遂げたり、たとえば文化祭とかで、みんなで作ったものを壊すときの あの悲しい感じって、今の16才にもあると思うし、その感じは出したいなと思ったんです。やっぱり流れ星に願いをかけるのは、ずっと昔からいつまでたって もあるような光景であってほしいし、夕焼けにちゃんと気づくような人類でいてほしい(笑)。100年後、私はいないけど、そういうふうであってほしいなと 思います。


■このドラマは家族がテーマですが、YUKIさんが思う家族って、どんなものですか?

YUKI:このドラマのお話も、コメディータッチでおもしろい話だったんですけど、私がひかれたのは、家族のぎこちない感じなんです。そう いう違和感のある関係はもともと私も感じていて、素肌にラップを巻かれた感じというか、いちばん近くていちばんイヤな存在というか。親子の、愛しているが ゆえの不器用な感じとか、大事に思っていることを伝えられない感じというか。


■そうですよね。恋愛の“愛”とは違いますよね。

YUKI:やっぱり日本の家族で、「愛してるよ」とは言わないですよね。「アイ・ラブ・ユー」を無理やり日本語にしただけで、言葉に出すのとは違うことだと思うんです、家族に対しての思いって。日本語で家族への愛を表現するのはすごく難しい。ひとことでは言えないんです。


■でも、この話のように、お父さんと中身が入れ替わったらとんでもないですよね(笑)。

YUKI:絶対ムリ! 1週間は長いですよ。私もあまり父としゃべらないから、この主人公の子のことはよくわかります。一緒にテーブルに 座っていても話すことがないし、向こうもしゃべりづらいんですよね、きっと。でも、それで嫌いだとか好きだとか、そういうのではない。その微妙なところが 私としては苦手なんです(笑)。


■親子って不思議な関係ですよね。

YUKI:このお話も、お父さんと娘だから成り立つんです。お父さんってかわいいでしょ。私ぐらいの年になると、男性を頼りにしたいという ことよりも、守ってあげなきゃとか、かわいらしいなとか、どちらかというとそういう目線になっているんです(笑)。そう思うと、このドラマの娘と父親のや りとりを見ていても、やっぱり彼女のほうがしっかりしていて、女ってこうなのかな、って思います。


■それにしてもテンションの高い曲ですよね。パワーが凝縮されてる。

YUKI:レコーディングがすごく楽しかったからだと思うんです。曲を作っているときがいちばん楽しいんです。そのテンションが曲のなかに 入ってしまうんだと思います。今は、新しい人たちとやるのもすごくおもしろくて、いろいろとアレンジを進めていくやりとりも楽しいんです。コンピュータだ けどフィジカルな感じ、というのを今目指していて、この曲はかなりそんな感じになっていると思うし、これからもっとなっていくと思います。これはかなり自 分のなかでも新しいんです。


■今回、音を作るときに、いちばん考えたところはどこですか?

YUKI:最初は、もっと80年代の感じがあって、もっとキラキラしていて、トゲや毒が何もない、かわいらしい感じだったんですけど、こう いう世界観であまりかわいらしすぎるほうにいってほしくないなと思ったんです。でも、今回新しくやってくれたエンジニアの中村くんが、ベースとベードラ (※編集部注)を前面に出してくるミックスをしていて、それがこういう情景と不思議にミックスされていておもしろくなりました。単純に、歌をもっと前に出 したい、いい歌を聴きたいなと思ったんです。今は、前衛的なものやざん新なものよりも、メロディーと詞がきちんと聴こえて、いい曲で、それでいてどこかは み出しているようなものをやりたいなと思います。歌入れのときも、歌っているとすごく力がわいてきて、私の持つエネルギーを歌に表そうと思って頑張りまし た。


■はい、めちゃめちゃ表れてます(笑)。しかも歌だけでなく、すべての音がパワフルですよね。

YUKI:そうですね。今はひとつひとつの音の個性を出していきたいと思っているんです。音をひとつひとつ、前よりももっと大事にできるよ うになってきたんだと思います。今回はかなりギリギリなスケジュールだったんですけど、その締めきりのある時間のなかで、奇跡は生まれるんですよね。


■そして、2年3か月ぶりのライブが決定しました! しかも大阪城ホールと日本武道館です。

YUKI:はい。本当にお待たせしました! 私もすごく楽しみです。大きな会場だと、ホールマジックというのがあって、ライブハウスとはま た違う魔法がかかって、音もすごく気持ちいい音で聴けるし、曲のメニューも最大限で見せられるんです。このライブでは、もちろん5年分のシングル曲もやろ うと思っているんですけど、私としては、5才の誕生日という気持ちが大きいんです。ハッピーバースデー、YUKI! なライブにしようと思っています。


■YUKIの5年分のものを見せつつ、最新のものも見せつつ。

YUKI:そうですね。もちろん新曲もやるだろうし。最近いただくファンレターが、中学生からとかすごく若くて、きっと初めて見る人も多い と思うんです。そういう人たちにも、震えるようなライブってこうなんだ! というようなライブのすごさを、10代の大事なときに見てほしいですね。そして 自分でも楽しみたいですね。


※編集部注 / ベースドラム、またはバスドラム。西洋音楽に使われる最も大きな太鼓