2007年11月6日火曜日

Interview with - AI

AIの歌には、それに対峙(たいじ)する人にも同じように自分をさらけ出させるパワーがある。もはや日本でのヒップホップ / ソウルのトップランナーという形容を超えて、ジャンプアップ真っ最中の彼女の音楽は、これからどこまで届くのか? そんな彼女が、両A面のニューシングル『I'll Remember You/BRAND NEW DAY』をリリース。レゲエやゴスペルのクラシカルなたたずまいを持つ名曲『I'll Remember You』とCMでも話題の『BRAND NEW DAY』、そして初挑戦のロック系夏フェス出演などについて、今回も大放談!


■前アルバム(『What's goin' on A.I.』)にけっこうシリアスなメッセージがあったから、そのあとのシングルということで、何か考えたことはありますか。

AI:そうですね。そのあとのシングルだから、やっぱりはっちゃけたいし、楽しい曲を作りたいなと思って。あとは、ライブの感じも残ってたから、「もっとアップテンポほしいな」「こういうのも作りたいな」っていうのがあって。で、ちょうどいいときに、まず『BRAND NEW DAY』のトラックがきて。「全然暗くない! こーれは疲れがふっとぶ!」みたいな(笑)、そういう曲に久々に会ったなっていうか。


■これはJALのCMにも起用されて、プロゴルファーの宮里藍ちゃんと結果的に“ダブル・アイ”になりましたね。

AI:そうですね。CMのコンテで藍ちゃんが出るのを知って、こう、頑張って次に向かっていく、新しい始まりとかそういうテーマだったから、そこからもインスパイアされて。うん。


■藍ちゃんとはやりとりあるんですか?

AI:たまーにメールでやりとりしたりとか。なんか彼女にとっては世界をツアーしてるのは普通のことみたいで。何がヤバイって、彼女って常に試合があるような感じがするじゃないですか? テレビとか「また出てる!」って。「どんだけ試合してるんだよ!?」みたいな。でもそんな忙しいなか、わたしの情報とか見て、アワード受賞したら「おめでとうございます」ってメールくれたりね。


■なんかお互い刺激になっていそうですね。じゃあ、曲は『BRAND NEW DAY』のほうが先だったんですね。

AI:そうですね。2006年のライブ終わり、での1発目か2発目くらいの曲だから、ライブのテンションは残ってる、うん。で、この曲を作ってるときに『I'll Remember You』のトラックがきて。「この曲もヤバイな」って、これもびっくりして。


■このトラックはどこがヤバかったですか。

AI:聴いたことのある感じなんだけど、だけど私はやったことないような曲というか。たぶんどんな人もいいトラック、気持ちいい曲と思えるんじゃないかって。


■アレンジにはレゲエっぽい感じもありつつ、ムードはゴスペル的でもあるという。

AI:うんうん。今回はメロと歌詞がほぼ同時進行かな? ぐらいの珍しい感じで。Bメロ(※サビへと展開する部分)とかは英語でいろいろ歌ってるうちに「ひとりじゃない~」って聴こえてきて。こう、歌ってるうちに次の言葉が聴こえるときってあるじゃないですか? そんな感じで、聴こえそうな言葉をどんどん書いていった感じですね。


■『I'll Remember You』は、まわりの変化に戸惑いながらも、自分自身は進まないといけないときがある、っていう歌ですよね。

AI:そうですね。自分のまわりではすごいものが動いてる、私の頭のなかでは地球がまわってるのが見えるというか。自分のまわりは絶対崩れないワケでも動かないワケでもないじゃないですか。で、そういうことが起こったときにそれに巻き込まれてほしくないっていうのがあって。


■自分の力でどうにもできないことだけど、っていう?

AI:そうそう。でももっと身近なことで考えていくと、いろんな人に出会うじゃないですか。そこで「あの人いなくなるんなら、もっとこういうことしておけば良かった」とか、「こういう話したかったな」とか、自分が後悔したことからきてるのかもしれない。


■でも「あなたを忘れない」って言われるのって、「ありがとう」もいいけど、もっとうれしい気がする。

AI:そう。でもね、これはただの感謝で「ありがとう」って言ってるんじゃなくて、感じた愛情とかを自分のなかで大事にするっていうかさ。そういうのを今回は歌詞でうまく言えたらなぁと思って。


■しかしここのところのAIさんの歌詞はずっとていねいというか、テーマがデカイですよね。

AI:いや、こういう歌詞はずっとはできない。そこに注ぎ込むパワーがけっこうヤバイから。毎回書いてたら逆にウソでしょ。


■そう思う。ところで、この曲歌ってるときに、いちばんだれを思い出しますか?

AI:そりゃ難しいね……。でもやっぱり私を発見して、日本でデビューしない? って言ってくれた人かな。ソウル大好きな人で、「絶対、グラミーだからなっ!」てずっと言ってたの(笑)。


■彼氏のことは思い出さない?

AI:くっ(笑)。いや、もう、彼氏には失礼かもしれないけど(笑)、全然これ恋愛と思って書いてないから。第一、もう歌詞はホントに時間がないなかで、自分を追い込んで……、ほかの曲のレコーディングを朝までしてて、帰ってきたときに出てきたんですよ、朝方。もうね、気分転換にクラブに遊びに行くとか、ショッピングすらしない。もう疲れてたのね、すっごい。だけど、「うわーん!」とか泣いたあとポッて書けたりして。


■なんで泣いたんだろう。

AI:疲れたとか、寂しいとか、「私もなんかしたい!」とか、あとは「ちょっとどうしよう?」って迷ってるとか、だれでも一瞬感情的になるときってあると思うんですけど、だれに言えるワケでもなく、気持ちが詰まり過ぎて、詰まり終わって……だけどそのあとスゴイんですよ。鼻血が出きったみたいな感じになって。


■書かなきゃ進まない、みたいな感じ?

AI:そうそうそうそう(笑)。もうね、書けるとうれしくて、「二重人格か?」ってくらい。


■さて、今年の夏はちょっとアウェイなイベントとか……。アウェイじゃないか(笑)。

AI:いや、私もそう思います(笑)、ぶっちゃけ。だけどすごい楽しみなんですよ。自分がどんだけアウェイなのか(笑)。


■(笑)。まぁ、ロックフェスとかが多いですからね。

AI:でもいい意味でも悪い意味でも、私のことを知らない人たちっていうのが、いっぱいいるだろうし。でもそういうヤバイ現場じゃないけど(笑)、そういうところに出て自分にまたどういうパワーがつくのかとか。自分のやったことのないイベントとかは常に軽く緊張感を与えてくれるし。私は見たことないから想像できないけど、絶対自分のためになると思うし、それをやることで次の自信につながるものがあるかもしれないし。ま、そこで「AIちゃーん!」って言われても最高にうれしいし、別に「はんっ!」みたいな感じでも……。


■それはないと思うけど(笑)。

AI:万が一、そういう反応をうけたとしても(笑)! 逆にもうどこへ行っても大丈夫よ、みたいな。やっぱりデビューしたてのころっていちばんキツイじゃないですか。だれも私を知らない、だれも見てないし、東京の友だちもまだいないからだれも来ないし。それにやる場所もクラブっていっても、パラパラとかトランスとかのハコで歌うワケで。みーんなナンパしてましたね(笑)。


■じゃ、それに比べたら全然今年はアウェイじゃないですね。

AI:全然そうですね。まぁ、自分で「アウェイ、アウェイ」言ってるけど、自分の曲って全然いろんなジャンルが混じってる感じがするし、私も別にロック好きだし、R&Bでもヒップホップでも、ヤバかったらクラシックとかも好きだし。とにかく自分は初めて出るイベントで、どれだけ盛り上げられるかな? っていうのが勝負というか、それはありますね。


■こう、たとえば“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”とかで、同じ日に出る人で見たい人います?

AI:いや、いっぱいいすぎて、もう1回タイムテーブル見ないと。あのね、マキシマム ザ ホルモン、大好きなんですよ!


■なんか共通するもん感じた、今(笑)。

AI:だーいすき! ◎ק*∞★◇!!(意味不明) ロックは叫びが好きなんですよ。だけど、彼らのはちゃんと歌になってるじゃないですか? そこがすばらしいなと思って。センスもいいし、いや~、楽しみです。もちろん自分のステージもね(笑)。もしかしたらまだまだリリースされない新曲とかも歌っちゃうので!