2007年11月5日月曜日

Interview with - 大塚 愛

約1年9か月ぶりとなる大塚 愛のニューアルバムは、タイトルを『LOVE PiECE』という。13編の楽曲たちは、それぞれが愛(LOVE)をたたえたカケラ(PiECE)。それらがひとつに集まって、めくるめく壮大な世界を構築している。これまで以上に喜怒哀楽をハッキリ描き出した極上のカケラたちによって、僕らはまた激しく大塚 愛のトリコになる。


■前作『LOVE COOK』は生音をふんだんにちりばめた温かなアルバムでしたが、今作はそれをふまえつつも、またさらに広がりをみせる内容になっているなぁと思いました。

大塚:そうですね。やっぱ年を取ったからですかね(笑)。今までいろいろやってきたことを混ぜてみたり、で、そこからいらないところは削ぎ落としてみたりとか、そういうことをやっていった結果だと思うんです。もちろんそれも3枚目までがあったからこそできたことだと思います。


■シングル曲が多数収録されているのも特徴ですね。

大塚:いろんなシングル楽曲が入っているんですけど、アルバムのなかに収まるとそれらに意外と一体感があって、それぞれが前向きに強く存在している感じがします。全体的にオシャレになったなぁって思ったりもするし。今までの大塚愛のイメージしかなかった人には、きっとまた新鮮な感じもすると思います。


■で、そこに5曲の新曲が入っているわけですけど、それらも違和感なく溶け込んでいて。

大塚:今回はシングルが多かったので、シングルが集まったときのカラーを考えつつ、全体的にひとつになっていけるような新曲を選んでいきました。結果的にすごく聴きやすい、いいアルバムになったなって思います。


■大塚さん的に、新たな試みだった楽曲ってありますか?

大塚:オープニングの3曲(『未来タクシー』『ユメクイ』『Mackerel's canned food』)は、歌詞の書き方として若干、女性目線ではなく男性目線で書いているんです。なので、最初に中性ソングが集まっているんです。


■あぁ、なるほど。一人称が“僕”になってますもんね。映画「東京フレンズ The Movie」で使用されていた『Mackerel's canned food』なんかは、さわやかなバンドサウンドですしね。

大塚:その曲は映画のタイミングで作ったんですけど、そのときからなんとなくアルバム曲っぽいなぁと思っていたので、今回入れてみました。タイトルや歌詞にたくさん英語を使ってるのも珍しいと思います。なんで使ったんだろう? 気まぐれです(笑)。たぶん最初の3曲は、「アレ!? 大塚 愛ってこんな曲を歌う人だっけ?」って思ってもらえるパートだと思います。


■『クムリウタ』はどうですか? この楽曲が今作のなかでも特に重要なんじゃないかなって思ったんですけど。

大塚:これは自分でも今までに出したことのない曲だなってすごく思います。自分っぽくない曲っていうのもあるので、すごく新鮮だったというか。強い1曲です。


■大塚さんの強い決意が感じらました。

大塚:なんか、いろんなことはあるんだけど、もうやれるだけやろうみたいな感じというか。今にも雨が降りそうなくもりのときの歌なんだけど、「雨なんか降るな!」っていう気持ちを歌ってますから。


■サウンドもすごく胸を打つ感じで。

大塚:ドラムとかベースで土くささみたいな部分を出して、あとはストリングスで空を表現しました。楽曲として空が必ず見えていてほしいっていうイメージがすごくあったので。


■本当にさまざまな楽曲が詰まった今回のアルバムで、大塚 愛という個性はよりくっきり、はっきりしてきたような気がします。

大塚:それはどうでしょう(笑)。でも、迷いはまったくないです。もう行くしかないっていう気持ちが表れているアルバムだと思います。


■そこには、この先も行けるぞっていう自信があったりもするんじゃないですか?

大塚:いや、それは行ってみないとわからないです。結果として願いがかなうかかなわないか、それはまだわからない。でも、行くんだっていう。


■強い覚悟ですね、それは。

大塚:そうです。『クムリウタ』に「二つある扉」っていうフレーズが出てくるんですけど、それはもう生きるか死ぬかなんです。そこで生きることを選ぶからには、頑張ろうっていう。なんか、人間っていちばん危機感がないと思うんです。動物たちは毎日が闘いというか、いつ食べられてしまうかわからないところにいるわけじゃないですか。でも人間はそんなことない。だから、こんなにも地球を破壊したりするんだとも思うんです。だから人間も、もっといろんなことを大事にして、覚悟をもって生きていかなきゃいけないと思うんです。


■まさにそのとおりだと思います。

大塚:とはいえ、私自身はみんなに影響を与えるすごい人とか、そういう人に別になりたいわけじゃないんです。もっともっと深く日常のことだったりとかを作品にしていきたいっていう……。ずっとただの音楽愛好家でいつづけたいんです。音楽をただ好きでいる人として、これからも生きていきたいなって思います。