2007年11月27日火曜日

interview with - BONNIE PINK

 BONNIE PINKが、オリジナルとしては約2年ぶりにニューアルバム『Thinking Out Loud』をリリース。前作『Golden Tears』や『A Perfect Sky』 に参加していたスウェーデンのプロデューサーチーム、バーニング・チキンと作り上げた本作は、シンプルなロックサウンドを基調とした、ハンドメイド感たっ ぷりの味わい深い逸品に仕上がった。アルバム制作秘話や昨年のブレイク時の心境、秋に控えた初武道館公演まで、今のBONNIE PINKのモードをたっぷりと聞きました。


■新作はどんなイメージで作ったんですか?

BONNIE PINK:乱暴に言っちゃうとロックというか。私の荒削りな部分、きれいにこざっぱりまとまってはいない作品。素の顔やダークサイド。そういうものを素直に表現した曲が入ってるんです。


■曲作りはいつごろから?

BONNIE PINK:今年の1月、2月と病気で寝込んでいて、そのあと病み上がりで書いた曲たちなんですよ。だから歌詞の内容は、いつ もよりちょっと疲れてるかも(笑)。でも、「ブルーだ……」って落ち込むんじゃなくて、「ブルーだ!」って暴れるような。そっちのほうに持って行きたいな と思って作ったんです。


■『Water Me』以外は、バーニング・チキンがプロデュース。彼ら3人とは年齢が近くて共通言語が多いとか。

BONNIE PINK:ですね。あと、プログラミングも幅広く駆使する人たちなんだけど、バンド活動もしている人たちなので、バンドで作 り出すグルーヴみたいなものを今回は特に大切にしてもらいました。それに私が提示するアイデアってどこかどうしても女性的な気がしていて。なので、男性目 線であったり、日ごろバンドをやってる人たちの発想とか、私にないものを彼らに求めたんです。


■実際、音にはハンドメイド感があるし、シンセやドラムの音色に70~80年代のテイストも感じました。

BONNIE PINK:そうですね。温故知新っていう感じ。何が良くて、何を取り入れて、何を削ってっていう話は毎日していましたし、わりと時間と頭脳を駆使して(笑)、どの曲も録ってる。スウェーデン人の感性と私の感性がいい感じにブレンドされたんじゃないかなって思ってます。


■スウェーデンには2か月滞在されたそうですが、レコーディング中にハプニングはありました?

BONNIE PINK:スウェーデン人って、基本エコなんでほとんどの人が自転車通勤なんですね。そしたら彼らのふたりが自転車を同じ週 に3台盗まれちゃったり(苦笑)。あとはメンバーのひとりの持病が再発しちゃうとか、スタジオの1階部分に空き巣が入るとか。私も最後のほうで、キャベツ を切ってて親指をブスッと切っちゃって。出血で「ふぅ~」ってなってた(笑)。だから、「ハプニング続きだね、わはは」って言いながらアルバム作ってまし た(笑)。

■本作には『A Perfect Sky』以降のシングル曲を収録。その曲が別バージョンで収められているのもうれしいですね。

BONNIE PINK:この曲はBONNIE PINKの 最近の代表曲になりましたけど、それがどのオリジナルアルバムにも属してないっていうのはすごく違和感があって。でも、シングルをそのまま入れるのもしの びないなと思って、ひと粒で2度おいしい感じにしようと思ったんです。後半はオリジナルなんですが、前半はリアレンジをして雄大なストリングスの上にメロ ディーがただよってるというか、そういうサウンドにした。また違った雰囲気で聴けるんじゃないかって思ってます。


■『Broken hearts,citylights and me just thinking out loud』はどんな思いで書いた曲なんですか?

BONNIE PINK:これは向こうに行ってから書いた曲で。街の雑踏のなかで孤独を感じることってあると思うんですけど、そんな 「あぁ、人は人だなぁ」みたいなことをボソッと言ってる自分を書いてるんです。結局、街はそんな人だらけっていうか。みんなそうなんじゃないの? ってい う。だからどうしなきゃいけないとかも言ってないし、わりとクールな視線で。


■どうしてそういう曲を書こうと?

BONNIE PINK:昨今、人とかかわるのが苦手な人が増えてるという印象があって。職種にもよるけど、家のなかで生活が完結している 人が増えてたりとか、孤独率が上がっている気がするんです。で、それをそのまま描写してるんですけど、今は自分から意識しないと勝手に孤独になっていくよ うな街の仕組みができてる気がしていて。もっと人と付き合っていくことに能動的になったほうがいいんじゃないかなって。それをみんなにも感じてほしくて、 この曲のタイトルの最後のフレーズをアルバムタイトルにしたんです。自分で思ってることをひとり言で終えるんじゃなくて、とりあえず外に発して、だれかに 聴き取ってもらって、それを連鎖させていくっていう。もっとloudに、louderにしていったほうが人とつながれて気持ち良くなれるんじゃないかって いう願いが入ってるんです。


■実際、BONNIE PINKさんは思いを外に出せるタイプなんですか?

BONNIE PINK:昔に比べて出すのは上手になりました。昔は気をつかいすぎてすごい疲れてたんです。だけど、気をつかっても相手は 私が気をつかってることに気づいてないことが多いなってことに気づいて(笑)。1998年から2000年までニューヨークに滞在してたんですけど、そこで 自分らしく生きる大切さや思ったことを口に出す必要性を学んだし、それ以降はもっとラクにいこう、もっと人に甘えていこうと思うようになった。気をつかう ときとリラックスするときの切り替えが上手になってきたっていう感じですね。

■昨年は、映画「嫌われ松子の一生」で映画初出演、その主題歌『LOVE IS BUBBLE』、『A Perfect Sky』とヒットが続きました。それを受けて、心境の変化はありましたか?

BONNIE PINK:映画の曲は、撮影の半年前の2004年末に書いていたんですね。で、資生堂のCMソングの話が来たのが2005年 の末。それまで、人からこういうのを書いてくださいとか、そういうオファーを受けたことがあまりなかったので、すごくうれしかったんですよ。その期待に応 えたいっていうのもあるし、作家魂をくすぐられたというか。ソングライターとして求めてもらえるところまで来たんだっていう自信がついたところはあります ね。


■ベスト盤『Every Single Day-Complete BONNIE PINK(1995-2006)-』で初めてBONNIE PINKの音楽に触れた人も多いと思います。そこで、ライブなどに関して、どこか新しいスイッチが入ったところはありますか?

BONNIE PINK:そうですね。去年のツアーとかは曲に対する反応の違いに客層の変化を肌で感じたし。だからこそ、ライブはやりがい があるなって思いました。初めて聴く人にどれだけ印象を残せるかっていう。そういう意味では、ここにきてすごく新鮮。それまでの自分はコンサバになってた かもしれないから、そういう自分のマインドを入れ替えるいいきっかけになったと思うし、初心に帰れた気はしました。


■ところが、そうやって走ってきたら、今年1~2月に病気で寝込んじゃったと。

BONNIE PINK:そう(笑)。“紅白歌合戦”前に風邪をひいちゃって。紅白もギリギリだったんですけど、終わってホッとしたんで しょうね、打ち上げではしゃぎすぎて風邪をこじらせたんですよ(笑)。元日から声ガラガラで熱出して。とにかくせきが1日中止まらないんです。で、ずっと せきをしてるもんだから声帯も壊しちゃって。痙攣性(けいれんせい)発声障害を併発して、要はしゃべり声がふるえるんですよ。


■いつでもビブラート?(笑)

BONNIE PINK:そう(笑)。話すのも歌うのも音程のコントロールがきかない。で、医者にとにかくしゃべるなって言われて。ずっと家にこもっていて、何にもできなかった。一応、曲作り期間だったんだけど、作曲どころじゃないっていうか。もう「死んじゃうんじゃね?」みたいな(笑)。


■でも、結果的にオフが取れてリフレッシュもできたんじゃないですか? 災い転じて福となす、っていう。

BONNIE PINK:全然! ただの災い(笑)。遅れてきた大殺界って感じでした。「去年で終わってるはずなのに、なんで1月に来ん の!」みたいな。悔しいですね、2か月ロスした感じがして。まあ、こうやって話せるようになっただけハッピーですけど、あのときは、「私このまま半年くら いダメかもな」って思ってたんですよ。「最悪、歌手生命も……」とか。もう暗ーくなってたんです(苦笑)。


■じゃあ、明るい話をしましょう(笑)。スウェーデン滞在中に行ったインターネットライブはどうでした?

BONNIE PINK:楽しかったですね。ただ、お客さんが目の前にいないので不思議な感覚もありましたよ。どういうふうに見えてるかわからない状態でやってるから、必要以上に画面に手を振ったり、とりあえずいっぱい笑顔作っとくみたいな(笑)。


■『Thinking Out Loud』の初回盤にはその模様を収録したDVDが付きます。見どころは?

BONNIE PINK:見どころは、ヤンス・リンドゴード(バーニング・チキンのメンバー)が興奮しすぎてヘッドフォンがどーんと落ち たっていう(笑)。でも、それくらい盛り上がってたんですよ。無我夢中になってた。演奏した曲数は少なかったですけど、きっと楽しんでもらえたと思います し、この特典映像で見られなかった人にも楽しんでもらいたいです。


■ライブといえば、9月から全国ツアーが始まります。どんなステージになりそうですか?

BONNIE PINK:アルバムがわりと男気があるので、過去のそういうたぐいの曲もピックアップしてやろうかなと。去年のバンドメンバーにもうひとりギターを追加するので、ギターがフィーチャーされた曲が多くなりそうな気がしますね。


■ファッションのイメージでいうと、スカートよりはジーンズみたいな。

BONNIE PINK:うん。今回はジャケットもジーンズなんでね。今回、気分がジーパンだったんですよね。なんかマニッシュな感じとい うか、最近はモノトーンのなかに原色がばーんと一発入ってるっていうか、そういうのが気分なんです。だから足開いて座ってもOK、みたいな(笑)。そうい う気分でいこうかなって。


■ここのところのビジュアルにはフェミニンな感じがありましたが、かつてのBONNIE PINKのイメージに戻しつつあるんですか?

BONNIE PINK:そうですね。また違う波が来てて。最近は、女らしいとか、意外とかわいらしいもの好きとか、そういうふうに言われ ることも多くて。でも、それだけじゃないんで、そうじゃない部分をそろそろ出していかないと。かわいいほうへかわいいほうへ行っちゃうと、自分に違和感を 覚えるんですよ。だから、バランス良く進めていかないと。


■さて、ツアーは初の武道館公演でファイナルを迎えます。武道館に対する意気込みは?

BONNIE PINK:まだそんなにピンと来てないですね。「武道館だ、どうしよう!?」みたいな緊張感はまだ全然ないんですよ。でも、 バーニング・チキンをゲストに呼ぶのは決まっているし、ツアーの締めでもあるので、いろんな顔をそこで出したいなって。来た人に「いやぁ、楽しかった な」って帰ってもらえるような内容にしようと思ってます。普段使わないくせにスタンドマイクをあえて置いて、永ちゃんみたいにやってみるとか(笑)。あ と、とりあえず一発目に叫んでみます、ブドーカーン!! って(笑)。