2007年10月21日日曜日

Interview with - 加藤ミリヤ

加藤ミリヤ、本領発揮。両A面となった今作『LALALA feat.若旦那(湘南乃風)/FUTURECHECKA feat.SIMON, COMA-CHI & TARO SOUL』は、湘南乃風の若旦那をトータルプロデューサー、MINMIをトラックメーカーに迎えた『LALALA feat.若旦那(湘南乃風)』と、日本のヒップホップ・クラシック『PARTEECHECKA』(ZEEBRA&DJ KEN-BO)をリメイクした『FUTURECHECKA feat.SIMON, COMA-CHI & TARO SOUL』という強力曲をダブルパック。彼女がもともと持つ音楽性と“今”を読み取る敏感なきゅう覚がばっちりハマった、フロアで話題になること間違いなしの一品となった。今年6月で19才になり10代最後の1年を全力疾走中の彼女に、曲作りの裏話と今のモードを語ってもらった。


まずは若旦那、MINMIと知り合ったきっかけから教えてください。

加藤:若旦那さんが私が行ってた高校の先輩だったんですよ。2年くらい前にライブイベントで一緒になったときに、「お前、おれの後輩なんだよ」って言われて、初めてそこで「え、そうなんスか?」みたいな感じで。それで、そのあと、いろいろ気にしてアドバイスをくれるようになって。MINMI さんは、私と若旦那さんが同じ高校出身だって知っていて、m-floのライブとかで一緒になったりして話すようになったっていう。

最初は若旦那をフィーチャリングするだけのプランだったとか。

加藤:そう。でも、お願いしたら、フィーチャリングだけじゃなくて、プロデュースもやりたいって言ってくれて。しかも、「MINMIさんにトラックを頼みたいけどどう?」って。前のシングルまではタイアップ用に書き下ろした曲が続いていたし、これからは自分がそのときやりたいと思ったことをやってみようっていう流れに変えようとしていたんですね。じゃあ、せっかくだからまったく新しいものに飛び込んでみようって。だからもう、こっちとしては願ったりかなったりっていう(笑)。

そのふたりが参加しているのに、今回の曲はレゲエやソカになってないっていうところがおもしろいですね。

加藤:ふたりに頼んでおいてアレなんですけど、「私はレゲエがやりたいわけではないんです」って最初に言ったんですよ。しかも、「今回は R&Bもヒップホップもやりたくない。ジャンルの壁を超えたものを作りたい」って言ったんです。そしたら、若旦那がウチらも同じ考えだって。MINMIさんも、私もレゲエっていうイメージがあるけど、いろんな音楽を聴くし、いろんなタイプをやりたいと思ってるって。そういうところでも、ふたりとは息が合ったんです。

結果、ソウルの雄大さとロックの力強さとカリブ音楽の躍動感が三位一体となった曲になってますよね。ドラムの独特な音色も印象に残るし。

加藤:ドラムの音色は、最近のヒップホップでいうと、リアーナの『アンブレラ』(『グッド・ガール・ゴーン・バッド』収録)みたいな感じ? トラックを聴いたときは、最初から“あ、いい!”って思いましたね。展開がころころ変わるところとかはMINMIさん節だなぁと思ったし、加藤ミリヤ的にも新しいし。今回は、ただ純粋に「いい曲だなぁ」っていうのができればいいなと思ってたんですよね。

『LALALA feat.若旦那(湘南乃風)』の歌詞でテーマにしたのは?

加藤:いわゆる愛だの恋だのっていうラブじゃなくて、それよりももっと深い、精神的な愛情を歌いたいなっていう話になって。お互い、すごく深いところでつながってるものって何かな? って考えたときに、私が「犬です!」って(笑)。ちょうどそのころ、若旦那さんも犬を2匹買い始めたんですよ。で、「ウチも!」「それ、共通点じゃないスか!」みたいに盛り上がって。そしたらMINMIさんが「犬の曲作ったらぁ?」って言い出して、ふたりで「えー!?」っていう感じだったんだけど(笑)、よく考えたら、飼い主と犬との愛を書いたらものすごく泣ける曲ができるんじゃないか? ってことになって。で、若旦那さんが犬の目線、私は飼い主っていう設定で書いていったら、こんな1曲ができあがったっていう(笑)。いろんな聴き方のできる、深い愛を歌った曲にしたかったので、あえてただのラブソングではない手法で詞を書いたんです。

ちなみに、ミリヤちゃんの愛犬の名は?

加藤:ララです。だから、タイトルも『LALALA~』なんです(笑)。

なるほど(笑)。ただ、そういう歌だとは知らなかったので、これは同せい中の若いカップルとか夫婦を描いた歌なのかなと思ってました。まだハンパで仕事も満足にできないけど、でも、愛する人を守ろうと毎日忙しく一生懸命生きている男性と、そんな男性に付いていくことを決めた女性の歌なのかなって。

加藤:あぁー。それは正しい(笑)。私のスタッフのなかにも、すごく忙しいけど同せいしてる人がいて、彼が「彼女を待たせてる気持ちがちょっとわかった」とか言ってたし。あとは子どもをひとりで待たせてるシングルマザーの歌に聴こえるとか。自分と自分の大切なものとの関係に当てはめて聴いてほしいですね。

でも、当人たちにとっては……。

加藤:犬なんですよ(笑)。私にとっては、ララが見返りを求めずに愛す“大切なもの”なので。

さて、もう一方の曲『FUTURECHECKA』についても教えてください。なぜ今回、こういう曲を作ろうと思ったんですか?

加藤:デビュー当時から、(ブッダ・ブランドの)『人間発電所』か『PARTEECHECKA』かっていうくらいに思ってたんです。結局、『人間発電所』を使って『夜空』(『Never let go』収録)を作ったんですけど、そのときから温めていたアイデアで。で、今回は『Parteechecka』と『Dancehall Checker』(※編集部注)があって、『FUTURECHECKA』っていう流れにしたかったし、『Dancehall Checker』みたいにいっぱい人を入れてマイクリレーみたいなのをしたかったんで、それで、次世代っていうキーワードで3人を集めて。タイトルにも、次世代っていわれてる私たちが未来をねらってるぞ、っていう意味を込めたんです。

SIMON、Coma-Chi、TARO SOULというのは、今、ドンピシャな人選ですよね。客演も多く、今、若手でほんとに注目を集めている人たちだし。

加藤:そう。“今!”っていうね。この3人を集められてすごいラッキーでした。で、やっぱうまい。もうげんなりするくらいうまいっていうか(苦笑)。度肝を抜かれた感はすごくあったし、評価されてるだけあるなって思いましたね。

※注 / 日本のストリート系映画のサウンドトラック盤『'hood』(1998年)に収録されているZEEBRA&DJ KEN-BO名義の『Parteechecka』がオリジナル。翌1999年にはBOY-KENなどを擁する日本の老舗レゲエレーベル“VIP”が同曲のリミックスを集めたオムニバス盤『Dancehall Checker』を制作。豪華な顔ぶれでのミックスが収録されており、そのなかの“LONG MIX”にはPUSHIM、BOY-KEN、ZEEBRA、YOU THE ROCK、Sugar Soul、TWIGY、DEV LARGEらが参加している。

本作は両A面の2曲に加えて、3曲目に『honey』も収録。この曲の聴きどころは?

加藤:ハッピーな甘いラブソングに聴かせつつも、裏では歌詞にミリヤ節を入れたつもりなんです。「あなたのことを信じてる」っていうのが歌詞のポイントなんですけど、「あなたのこと、私はこんなに大切に思ってるのよ」とか「あなたのことを信じてるから……」って言われるだけで、言われたほうは身動きが取れなくなると思っていて。っていうので、ちょっと相手にくぎを刺すっていう歌なんです(笑)。

ところで、今回のシングルは、3曲とも久々にクラブや現場を意識した曲作りになっていますよね。

加藤:はい。このあいだの9月にデビュー3周年を迎えて、ちょっと自分のことを考えたんですけど。やっぱり変わっていかないと聴いている人たちはつまらないと思うんですけど、でも、変わっちゃいけない部分も絶対必要だと思っていて。アーティストによっては、シングルごとにコロコロとキャラが変わっていく人もいるけど、やっぱり私にはこれだって思ってる音楽性が1個あるし、それがあったうえで好きなことをやるっていうのが私のやり方かなって。だから、変わっていくものと、絶対変わらないものっていうのを1枚に表現したかったっていう気持ちがあって。その“変わらないもの”っていうのが『FUTURECHECKA』であり、“変わっていくもの”を『LALALA~』で表現したっていう感じなんです。

デビュー3周年も節目ですが、この1年は10代最後の年にもなりました。10代最後の年に突入して、何か思うところはありますか?

加藤:10代が終わるなっていうのはすごい節目を感じるし、次のアルバムで10代に区切りを付けたいっていう部分はありますね。10代だから、若いからっていうので許される部分はすべて網羅したいなっていう気持ちがあって。言いたいことは言っちゃえー、みたいな(笑)。若いからスイマセン! みたいな(笑)。10代最後はそういうのをメッセージとして発したい。10代だから思う、オトナじゃないけど子どもでもないなりのメッセージを今残さなきゃっていう。高校に行ってたときは、女子高生のカリスマっていってもらえましたけど、最後は、10代のカリスマっていわれて終わりたいなっていう気持ちはあります。

じゃあ、10代最後は言いたいことを言って、暴れてやろうと。

加藤:そうですね。この1年はぶっ飛ばしていきたいなって気持ちはすっごいありますよ(笑)。19才を迎えたときに、振り返ってみたら15 才で上京して16才でデビューして、すーごい青春ぽい青春ってできなかったなぁ、なんか遊べなかったな、とか思ったりして。そのぶん得たことっていっぱいあるんですけど、なんかすっごいもったいないことしてるかなって。だから、今年1年はある程度はっちゃけたいというか(笑)。ある程度、そういう遊びもしたいなって思ってます。