2007年10月17日水曜日

Interview with - Underward



5年ぶりに5thアルバム『Oblivion with Bells』をリリースしたアンダーワールド。MSNミュージックでは、新作をリリースするまでのこの5年間、彼らの動向に注目。そこから自ずと解き明かされる『Oblivion with Bells』の全貌。“アナザーサイド・インタビュー”とも言うべき、興味深いリック・スミスとカール・ハイドへの一問一答!

なぜ、今回V2 Recordsを離れ、新しい環境を求めたのですか?

カール:V2との契約完了後、新たな仕事の手段を追求したいと思ったからさ。それが具体的にどういうことか、言葉では説明できなかったので、実際に自分達でやってみるしかないということもわかっていた。実際にやることで、周囲の理解を得て、いずれ新たなレコード会社と契約した時、色々な手段を使って作品を発表できるからだ。インターネットを使った音楽ダウンロード、本の出版、自分達のスタジオから生放送で送るウェブラジオ、Quicktimeを使ったウェブテレビのコンテンツ制作、5種類の12インチのリリース、即座に世界中のオーディエンスとコミュニケート可能なフォーラムの立ち上げ…そういったことすべて1980年~81年くらいからやりたいと考えていたことなんだ。それがインターネットによって可能となったのさ。

ガブリエル・ヤレドと発表した『BREAKING and ENTERING』(詳細はこちら)を経て、制作スタイルに何か変化はありましたか?

カール:ガブリエルは素晴らしいよ。オスカーも受賞するような男だが、新たなアイディアに対して常にオープンマインだ。彼とは良い友人になれたね。僕らとやっていた時期は、彼にとってのインプロヴィゼーション(即興)期だったんだよ。実際に3人が部屋に集まって演奏を行うこともあれば、ネットでオーディオ・ファイルやMIDIファイルを交換しあい、バーチュアルなレコーディング・スタジオで互いのアイディアを行き来することもあった。そのあと、アビーロード・スタジオに場所を移し、そこでも即興と演奏を続けた。この場合の演奏とは、いわゆる昔ながらの楽器と、エレクトロニクスの両方だ。ガブリエルは僕らに、それぞれのメインの楽器を弾くことを勧めたんだ。僕の場合はギター、リックの場合はピアノ。ガブリエル自身も素晴らしいピアノ奏者なので、彼にも弾くように勧めたよ。ロンドン交響楽団とロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラとも仕事ができた。僕とリックにとっては初めてのオーケストラとの共演だった。その経験は、今回のアルバムに大きな影響を与えてくれたと思うよ。今後もYaredworldとして一緒に何かを作るつもりだ。彼は映画音楽の世界では超一流なので、常に何かに取り掛かっていて、とても忙しい。でも連絡は取り合っているし、時期が訪れたら、また3人でスタジオに入ることになるだろう。

リック:ああ、彼との仕事は本当におもしろかったし、素晴らしい経験だった。ガブリエルの才能はものすごいよ。いくつかの新しい経験をした。たとえばアビーロード・スタジオで15~20年ぶりに仕事をして、とても楽しかったんで、2本のサントラ製作のあと、『Oblivion With Bells』のレコーディングでもアビーロードを使ったよ。ガブリエルとは数年内にアルバムを作る予定だ。今度はサントラではなく、フルアルバムをね。彼とは知人の紹介で知り合ったんだが、とてもオープンで寛容で、僕らと仕事をすることで負うかもしれないリスクへの準備もできていた。そういう些細なことが大切なんだ。言葉で何を学んだかは説明できないが、一つ一つの小さな経験が『Oblivion』に引き継がれ、生かされたことだけは間違いないよ。何よりも、素晴らしい人に囲まれて仕事をしていると、自信がつく。つい、僕らは「リズムがどうだ、Raveのスタイルがどうだ、ドイツのテクノシーンがどうだ」という話ばかりしがちだ。そういうことも勿論重要だが、基本は心がどれだけ動かされるかだ。どれだけパッションを持てるか、ということだから。

ここ最近のアンダーワールドは、作品の発表スタイルが、パッケージよりも配信に重きを置いているように思うのですが、今後もパッケージ化にこだわらずに、配信で発表していくのでしょうか? また、パッケージに残したい楽曲と、配信のみで発表する作品に大きな違いはあるのでしょうか?

カール:ああ、続けていきたいと思っているよ。そしてそれらが今回、物理的なアルバムである『Oblivion with Bells』の“バーチュアルなカウンターパート”となり、ウェブ上での存在性を発揮し、さらに成長を続けてくれることを望んでいる。これは僕らがかなり前から、頭の中で考えていたことだ。『Everything Everything』のDVDがそうであったように、「形ある」レコードがバーチュアルな世界への入口になってほしいんだ。

パッケージに残したい楽曲、配信のみの楽曲、とわけて考えているわけではない。ただ、ダウンロード・オンリーの曲の方が、今回のアルバムよりはrawで洗練度は低く、手が加えられていない。それは作り終えたらなるべくすぐに配信したい! という気持ちがあったからだ。ウェブラジオなどでは、あえて完成途中の曲をリックが流すこともあった。最終的にそのままの形でリリースされることはないとわかっていても、その過程は聴く価値があるとリックが判断したからだ。そういうものは惜しみなく、発表する。Rawでもマジカルな何かがそこにはあるわけだから。

つまり今の僕達には、完成の度合いによって、それぞれを発表できる複数の発表手段がある、ということさ。これまでにはなかったことだよ。

パッケージもとても重要だ。パッケージは79年以来、Tomatoの創設メンバーの一人であるジョン・ウォリカーが手がけている。彼はオーストラリア、メルボルンに住んでいるので、3人での作業はバーチュアルなアート・スタジオで行う。毎日、僕らは彼に写真や絵、言葉を送る。それをジョンが編集、再編集し、同時進行でリックはアルバムをプロデュースする。そしてアートワークと連動させていく…という具合なんだ。

僕らのウェブサイトだが、まさにこの24時間以内に新装開店される予定だ。そこには僕らとアートとのコラボレーションも数多く含まれているよ。そういった色とりどりのパレットの中から、「これはレコードのパッケージ、これは本、ライブ用の映像、アートギャラリー用に・・・」というように選んでいくんだ。ここ5年間、舞台裏ではそういったことが活発に行われていた。それがようやくインターネットによって、その姿を見せ始めることになるのさ。

現在、アンダーワールド・チルドレンとも言うべき、若手ダンス・ミュージックのアーティストが続々とデビューを果たしシーンを盛り上げていますが、このような現状をどのように捉えていますか?

カール:素晴らしいことだよ。新しく、若い世代のアーティストが登場してきていることは嬉しいことだね。彼らは、僕らのやってきたことに挑み、チャレンジすると同時に、さらに発展させて違うところに持っていこうとしているよ。必ずしも、ダンスではないかもしれないが、エレクトロニック・ミュージックということでいえば、今一番おもしろいのは“Efterklang”だね。彼らのことは何年も前から気に入っているんだ。他にも“Simile Mobile Disco” 、“120 Days”、“Mathew Johnson”、“Ricardo Villalobos”、“James Holden”、“Pig & Dan”、“Dominik Eulberg”はおもしろい。Cocoon、Shitkatapult、Compactといったレーベル、UKのDextro(aka Ewan MacKenzie)など面白いグループが沢山出てきているね。

リック:そんな風に言ってもらえるのはとても嬉しいよ。確かに年齢的には、本当の子供達くらい若い子もいるけど(笑)。そんなことを言ったら、彼らから嫌がられるんじゃないかな。なかなかおもしろい音楽を作っている子達はいるよね。James HoldenとかTiefschwarzとか。いつもエイドリアン・シャーウッズの動向にはいつも注目しているよ。ちょっと前にもすごくいいテクノ~エレクトロニック・ミュージックを耳にしたよ。アコースティックな音楽もエスニック・ミュージックも大好きだけど、ピュアなエレクトロニック・ミュージックにはやはり惹かれるんだよ。たとえばAdam Bayerの「Stereotypes」というトラックは…最新ではないが、めちゃくちゃ気にいっている。リズムの可能性を感じさせてくれたトラックだね。最近ではダンス・ミュージックをやってるバンドもいいのが多いね。“LCD Sound System”とか“Simian Mobile Disco”とか。

来日公演の予定がありますが、その際、企んでいる事、やってみたい事があれば教えてください!

カール:これまでもそうだったが、日本でのライブでは世界の他の国ではやっていない、それ以上のことをやろうと思っているよ。日本からは、そういうインスピレーションをいつも感じるんだ。一つ、言えるのは、Tomatoの映像がこれまで以上に多く使われる。おそらくこれほどTomatoの存在感の大きさを感じるライブは、久しぶりになるんじゃないかな。ショウ自体、毎晩のように変わっていくものなので、他の国とまったく同じということはまずない。東京でのショウは他よりは大きいので、プロダクションの部分で僕らも頑張らないとならないんだ。

リック:11月に日本に行く予定だけど、それまでとは違う、新しいことを実験し、挑戦するつもりだ。もちろん古いものもやるけどね。日本のオーディエンス相手ならそれが出来るので、いつも僕らとしても楽しんでいるよ。日本のオーディエンスはコンサートでちゃんと聴いてくれる! バンドにとって、それはとても嬉しいことなんだよ。すでにヨーロッパでウォームアップ用のショウを何度か終え、9月から始まるワールドツアー、そして日本には11月に行くよ。