またしても、過去最高作。2nd以来となるギル・ノートンをプロデューサーに迎え、フー・ファイターズが完成させた 6thアルバム『エコーズ、サイレンス、ペイシェンス・アンド・グレイス』は、作品ごとにバンドとして大きな前進、進化を遂げてきた彼らが、まさにネクスト・レベルと呼ぶべき新たなステージに突入したことを知らしめる、圧巻の大作だ。フロント・マンのデイヴ・グロールと、ベースのネイト・メンデルに話を聞いた。
2005年に2枚組の大作『イン・ユア・オナー』を、そして去年はアコースティック・ライブ盤『スキン・アンド・ボーンズ』を出されて、今年またオリジナルの新作と、音源リリースが続いていますが、それだけ創作意欲とかアイディアに満ちあふれている状況なのですか?
デイヴ:そういうことだね。2枚組を作ったことで、新しい目的とか、衝動とも言えるような新しいエネルギーが得られたと思う。それと初めてアコースティック・ツアーに出たことにも、すごくインスパイアされた。まるで新しいバンドに生まれ変わったみたいなんだ。12年もバンドをやってると、時には注射を打ってギアを入れ直すようなこともしないとさ。それが『イン・ユア・オナー』だったってわけ。おかげで曲を楽に書けるようなったし、よりクリエイティブになれたよ。
どんなアルバムにしたいか、イメージみたいなものはあったのでしょうか?
デイヴ:それはないんだ。前作の時は、2枚組にして、アコースティックの曲を1枚に、エレクトリックの曲をもう1枚に入れようっていう、すごく明確なビジョンがあったけどね。今回はコンセプトはなくて、曲が主体。ベストな曲を選んだんだ。歌詞、メロディ、アレンジ、曲構成の面からベストなものを選ぶっていう、まあ普通は当たり前とされることをやっただけなんだよ。
ネイト:今回は選ぶ曲がいつもより多かったし、どういう方向性にするためにどれを選ぼうとかいった心配もなかったから、ただベストな曲を選ぶことに専念できたんだよ。
このバンドはどこまで進化するんだろう、どこまでビッグになるんだろうと怖くなるくらいに、さらなるスケール・アップを果たしたアルバムになっていると感じたのですが、本人の手ごたえはいかがですか?
デイヴ:オレたちは同じことを繰り返すようなバンドじゃないってことだね。常に新しい方向性を試しながら、自分たちらしさを失わずに成長できてる。そのことが確信できたよ。今のオレたちは、怖がることなく何でもできるんだ。いい状態だよ。成長するってことに対して恐れを抱かないっていうさ。
ネイト:このレコードは本当に大好きなんだ。とにかく早く聴いてもらいたいよ。
今作にはアコースティック・ギターのインストや、メロウなピアノ・バラードもありますね。そういうサウンドは本人としても新機軸という感覚なのでしょうか?
デイヴ:きっかけは、オレの奥さんが誕生日にピアノをくれたことなんだよね。ピアノの弾き方なんか全然わからなかったんだけど、ピアノで曲を書き始めるようになってさ。うん、だからオレにとっては、まったく新しい領域だったよ。
でも、そんな振れ幅の広い楽曲が1枚に収められているのに、全然とっ散らかっていなくて、すごくまとまっているんですよね。
デイヴ:それはギル・ノートンのおかげだね。彼が最高のプロデューサーだってことは間違いない。彼はピクシーズとか、パティ・スミスとか…オレたちも大好きな素晴らしいバンドをたくさんプロデュースした人で、オレたちの2ndアルバムも手がけてくれた。彼が一番得意とするのは、アルバムをアルバムらしくすることなんだ。すべてが自然にまとまって、すごくリアルで誠実なアルバムに仕上がったと思うし、アルバム自体がひとつのストーリーみたいになってる。始まりと終わりがあってさ。すごく満足してるよ。
自分でも、バンドのキャパというか、懐がどんどん広く深くなっているような、そんな実感があるのではないかと思うのですが、いかがですか?
デイヴ:うん、自分でもバンドの成熟を実感してるよ。まあ、まだ子供みたいなところもあるけどね(笑)。オレたちはずっと前に進み続けて、本当に一生懸命、努力してきたんだ。ライブはもちろん、ソングライティング、プロダクションなどすべての面でね。ここまですごく長い時間がかかったけど、うん、今のオレたちは、かなり強いと思うよ。
タイトルの『エコーズ、サイレンス、ペイシェンス・アンド・グレイス』には、どんな気持ちが込められているのでしょうか?
デイヴ:いろんなムードやテクスチャーを含んだアルバムだから、タイトルが難しかった。『エコーズ、サイレンス、ペイシェンス・アンド・グレイス』っていうのは、最後の曲の歌詞から来てるんだ。ビジュアル的な感覚を持った、美しいフレーズだと思ったんだよね。ラウドでへヴィーな曲もあるけど、同時にデリケートで美しい曲も入ってる今作のタイトルとして、クールだと思うよ。このアルバムはたぶん、これまでのどの作品よりもディープで、そして美しいからね。
今回のアルバムを通して、どんなものを受け取ってもらえたら嬉しいですか?
ネイト:そうだね、この作品を聴いてくれたすべての人と、心で繋がることができたらいいなと思うよ。
デイヴ:いろんなサウンドが楽しめると思うから、聴いてくれた人のマインドがオープンになって、あらゆる種類の音楽を受け入れられるようになってくれたらいいね。たとえば、オレたちの作品を好きになったことで、60年代の音楽にも興味を持つようになって、ゾンビーズのレコードを買ったりさ(笑)。
2007年10月17日水曜日
Interview with - FooFighters