■『A BEST』からまる6年たったんだね。
浜崎:ビックリだよね(笑)。私、ふだん自分の曲とか聴かないから、6年前にさかのぼってずっと聴いていくのはけっこうヘビーな作業だったよ。
■そのころのことがよみがえってくるでしょ?
浜崎:そうそう。その時々の風景とか、そのころの自分の状態とか、鮮やかによみがえってくるよね。思い出すはずじゃなかったこととかも思い出したりして。
■胸が痛かったりした?
浜崎:痛いだろうなと思ってたんだけど、それが案外大丈夫だった。“もう絶対無理”とか“これは絶対一生許せない”とかね、激しく思ってた こともあったし、その当時のイメージが強いから、そのあとも見ないように、見ないようにしてたこともあったけど、ちゃんと向き合ってみたら、“あれ? 全 然大丈夫だよ”って思えた(笑)。
■逆にいうと、そう思いたかったから『A BEST 2 -WHITE-』『A BEST 2 -BLACK-』に臨んだというところはあるの?
浜崎:うーん、大丈夫って思えるとは予想してなかったけど、“時間がない”とか“痛い”とかっていろんな理由をつけて目を背けてきた過去の自分と、今ちゃんと向き合うべきだなとは思った。
■じゃあ、そう思ったきっかけはあった?
浜崎:2006年の終わりに、『Secret』という新たな作品をつくることができたというのが大きかったかな。それを引っさげた初めてのアジアツアーもあるというところで、1回ここで過去の自分を清算させてもらおうかなと思った。
■『Secret』は『A BEST 2 -WHITE-』『A BEST 2 -BLACK-』にはまったく含まれてないよね。そこにも明確な理由があるんでしょ?
浜崎:うん。『Secret』は私にとってすごく特別なアルバムだと思ってるんだよね。私のなかでの裏タイトルは“Reborn”みたいなところがある。
■生まれ変わったということ?
浜崎:そんな感じ。だからベストという過去のいろんなものたちと混ぜることはできなかった。あのアルバムをつくることができたから、ちゃんと過去の自分と向き合って、ここで全部許してあげようと思えたのかもしれないね。
■『A BEST』のときとはまったく違う、積極的な気持ちだったんだね。
浜崎:『A BEST』のときはすごくネガティブだった。だって、ジャケットからして反抗してるもんね(笑)。
■6年前のベストがそうだったから、今回もファンの人たちは心配してたんじゃない?
浜崎:うん。“大丈夫なの?”ってすごく思ってくれてたみたい。でも、本当に今回は大丈夫だから、「安心しててね」って言いたい。ベストを作る作業を通じて、「私のやってきたことはコレです!」って、ちゃんと誇りを持って言える気持ちになっているから。
■『A BEST 2 -WHITE-』『A BEST 2 -BLACK-』を語るうえで、『Secret』がキーポイントになっているってことは、2006年がayuちゃんにとって非常に大事な年だったということだよね。
浜崎:そうだね。去年はいろんなことを新しくしたいと思ったのね。そのためにはそれまでのものを壊していかなきゃいけないじゃない? じゃあ、どこからぶっ壊していくかってことを、まず考えたよね。
■今までだったら、考える前に行動しちゃうようなところがあったじゃない?
浜崎:うん(笑)。とりあえずやっていかなきゃいけない状況っていうのがあったからね。でも去年は、自分からちょっとひとりになって考える時間をつくろうとしてた。
■浜崎あゆみ史上最長のツアーがあったし、リリースも通常のペースだったと思うんだけど、少しは時間的余裕ができてきたのかな?
浜崎:もちろんけっこうテンパリまくりの時期は多々あったんだけど(笑)、ほら、仕事って“やりたいこと”と“やらなきゃいけないこと”があるじゃない?
■そうだね。ayuちゃんだと、例えば賞レースを目指すことだったりっていうのが、“やらなきゃいけないこと”だったりしたのかな?
浜崎:年末に向けてそういうことを考えなくてよくなると、単純に自分の音楽とか自分自身に正直でいられるというか、そういう状態でいられたことはたしか。
■賞レースというのは一例だけど、とにかく“やらなきゃいけないこと”から少し解放されて、自分に集中ができた1年だったんだね。
浜崎:そうそう。それで、どこからぶっ壊していくかを考えることもできたし、実際壊してはつくって、壊してはつくってというのをやり続ける こともできたんだよね。そしたら、秋くらいまでには、自分がよし! と思うところまでそれが完了しちゃった。そしたらダッシュしたくなってきちゃって (笑)。
■当初ミニアルバムと発表されていた『Secret』が急きょフルアルバムになったのは、秋までに自分の納得がいって加速したからだったの?
浜崎:そうなの(笑)。曲もいっぱいできちゃって、単純に“これ、全部入れたい”ってことになった。たぶん、ぶっ壊している最中は、そのミ ニアルバムも“やらなきゃいけないこと”のカテゴリーに入っていたのかもしれないね。それがいつしか“やりたいこと”に変わって、自然と書きたいことも生 まれていったという感じだった。
■あの作品の詞は、本当にさえわたってると思う。
浜崎:うれしい! つくってる最中、“アタシ、ヤバくない?”って思うほど調子が良かった。で、最終的にさっき言ったように、すごく特別な作品になったんだよね。
■年末に急きょフルになったから、あのタイミングでの取材はほとんどしなかったでしょ。でも、すごく力のある作品だったから、絶対何かあると思ってた。
浜崎:フフフッ。
■あれがあったから『A BEST 2 -WHITE-』『A BEST 2 -BLACK-』もあるわけだもんね。
浜崎:そうだね。今回ベストをつくってつくづく思ったのは、時間ってすごいなっていうことかな。
■“もう絶対無理”と思っていたことも、今なら“なんだ、大丈夫じゃん”って思えるという意味で?
浜崎:うん。すべてを解決して、無傷に戻してくれるわけじゃないけど、確実にいろんなことを和らげてくれるなと思った。そう思ったときに、 それと同じことを、聴いてくれる人たちがそれぞれの人生のなかで感じてくれたらいいなと思ったの。そのためにこのベストをつくってるんだという確信のよう なものが持てたというか。
■聴き手は、浜崎あゆみの歌を通して昔の出来事を思い出すだけじゃなく、いつの間にかそこを乗り越えてる自分がいることに気づくわけだよね。
浜崎:そうであったらいいなと思ってる。
■今回のベストを“BLACK”と“WHITE”に分けたのは?
浜崎:それは単純に1枚には入り切らない数になったから。作業に取りかかった当初は、何にも考えてなくて、1枚に収めるつもりだった。で も、6年っていうのはかなり長い月日でした(笑)。もちろん私なりの理由があって曲を振り分けてはいるんだけど、ぶっちゃけそこはあんまり気にしないでく ださい。
■ジャケット写真については?
浜崎:今回は泣いてないです(笑)。白と黒ってハッキリした別の色だけど、ほぼ同じ色みたいなところもあるでしょ。そんなことを考えながら、自分の二面性について表現してみようかなと。
■例えばどんな?
浜崎:仕事をしてる自分とプライベートの自分って違うし……私は自分のことをすっごくアタマが良くて、すっごくバカだと思ってるし、すっごく大人で、すっごく子どもだとも思ってるの(笑)。そんな部分が出てるんじゃないかな。
■なるほど! 長期構想だったアジアツアーもようやく実現するね。
浜崎:うん。すごく楽しみにしてる。文化もルールも違う国に行くわけだから、あっちではできて、こっちではできないこととかがたくさん出てきて、準備にはいろいろと苦戦してる。でも、台北、香港、上海、日本でやる公演の内容は、基本的にはまったく同じ。
■同じ演出、同じセットリストってこと?
浜崎:そう。同じものを見てもらうことこそが大事だと思ってるの。“日本とアジア”じゃなくて、“アジアはひとつ”っていうことを伝えるためにこのツアーに出るわけだから。
■『A BEST 2 -WHITE-』『A BEST 2 -BLACK-』で過去を清算し、『Secret』で現在を表現し、それを引っさげたツアーでは未来が見えてきそうだね。
浜崎:うん。頑張ります!
2007年12月11日火曜日
interview with - 浜崎あゆみ