2007年12月8日土曜日

interview with - レミオロメン


 人気アーティストの仲間入りをしても、いっさいおごることなく、常に“自分たちの居場所”を探し求めるレミオロメン。そんな彼らの新曲は『Wonderful & Beautiful』。聴き終わった瞬間、ふと自分の大切な人のことが心に浮かぶ、そんな作品だ。この季節にピッタリの、視野の広いキラキラしたアレンジが心地良く、藤巻亮太の歌声はヒートテックのように温かい。年が明ければ5か月間におよぶツアーが待っている彼らに、近況を尋ねた。


■2007年を振り返ってみて、レミオロメンにとってどんな年だったと思いますか。

藤巻:HORIZON』 からアリーナツアーまでやった昨年は、ひとつのことに向かって突っ走った感じでしたけど、2007年に入ってからは“何のために音楽をやるのか?”とか “何を書きたいのか?”とか、それを立ち止まって考えた年でしたね。6月に3人で、1か月間スタジオにこもったんです。そのプリプロ(※編集部注)を経 て、そこから再び、地に足が着きはじめてきた気はしてますけどね。

神宮司:先のことを考えず、純粋に音楽に集中できた時期でした。あーでもないこーでもない言いながら、3人で曲を積み上げていく作業ができたし、楽しかったし、コミュニケーションもより深まったし……。

藤巻:そして夏は野外フェスにたくさん出たんですよ。対バンの方たちと一緒だから、自然と自分たちの立ち位置もわかったし、レミオロメンとして演奏するという、そのことを再び確認できた気もしましたよね。

神宮司:洋楽ファンも多いフェスとか、場所によって聴いてくれる人たちもさまざまだったし、そのあと小さなライブハウスでやったり、いろいろなことを経験したうえでシングルのレコーディングに入れたのが大きかったです。

前田:勢いでこれまで来て、実際その勢いはすごかったと思うんですけど、ここらで“勢い”というより“投げたいところに球を投げたくなった”というか……。それもあっての6月だったし、フェスだったと思います。


■“投げたいところ”というのは?

前田:音楽って、曲があれば、ミュージシャンだったらとりあえずは演奏できるわけですけど、ただ演奏するんじゃなく、しっかり考えたかっ た。でも、考えすぎてもダメだろうし、勢いというものも感情を表現するために必要で、そのあたりのバランスをしっかり取って、クールだけど熱いみたいな、 そんな感覚を目指すようにはなってますけど。


■その6月のプリプロから、今回のシングルへとつながっていくわけですよね。

藤巻:10何曲かやりながら試して、そのなかで最初にしっくりきた曲が今回のシングルになったんですけどね。


■新たな境地みたいなものは?

藤巻:それこそ前だったら、“この心のモヤモヤは何なんだ!?”ってことを音楽にしたら“すっきりした”みたいな、そんなシンプルなこと だった(笑)。でも徐々に、自分のなかに不在感みたいなものが出てきたんですよ。でも、ふと思うと、自分はレミオとしてとか、ミュージシャンとしてとか、 さまざまな立場を意識して作ってたなぁって思って……。そうじゃなく、全部ひっくるめて藤巻亮太として作る感覚を取り戻したかった。それがカップリングの 『リズム』の詞を書き、『Wonderful & Beautiful』を書き終えたころには、不在感も徐々になくなっていったんですけどね。


※編集部注 / プリプロダクション。レコーディング前に曲の構成やアレンジを詰める作業のこと

■『Wonderful & Beautiful』には、車でどこかへ向かう途中、渋滞に巻き込まれた主人公が出てきますね。

藤巻:夜、お台場からレインボーブリッジを渡ったとき、芝浦のマンション群の明かりが見えて、ふと“自分は何才まで東京に住んでいるんだろ う”って思ったんです。そのことも曲を書くキッカケですね。でも……“田舎も都会も、実はあんまり変わらないのかもねぇ”とも考えた。どこに住もうと、何 を知ろうと、それより大切なことがわかったっていうか。今、近くに思う人がいるなら、その人を大切にしなきゃという、そんな気持ちも込めた歌なんだと思い ます。あと、自分たちのことを振り返ってみてもね、これまで何度もミスをしたし、ブレたこともあったんですよ。でもそれでも続けてこられたのは、まわりで 支えてくれた人があったからなんですね。素直にそう思えたし、実際この曲もそんなとても素直な気持ちで書けたんですよ。

神宮司:確 かに車で渋滞にという、そんな場面も出てきますが、そこに限定されない歌なんですね。聴く場所にしてもさまざまでいいし、お店で流れたり、車のなかのラジ オから聴こえてきてもいい。そうやって、どんどん街中に流れていったらうれしいんです。そして“2007年の冬にこういう曲があったな”って、思い出に なってくれたらすごくうれしいです。

前田:さっき“素直に書けた曲”という話がありましたけど、演奏面でもそこに引っ張られたんじゃないかと思います。アレンジにしてもそうですけど、3人とも迷わずまっすぐなパワーが出せましたから。


■カップリングの『Wonderland』と『リズム』に関してもひと言お願いします。

藤巻:『Wonderland』は僕らの作品のなかでも青春色の強い曲で、どういう思いで、どういうアプローチでやっていくかに注意しながら作りました。結果、バンド感をすごく大事にした仕上がりになりましたけど。

前田:この曲は、まさに僕らがそうやって生きてきた気がするし、今ももちろん行きたい場所もある……。それを忘れたくない。そんな思いも込められてると思います。

神宮司:ふと立ち返るじゃないけど、自分たちを見失いがちなとき引き戻してくれるかもしれない、そんな曲じゃないですかね。

藤巻:あ と『リズム』に関しては、今回のレコーディングはここから始まったんです。この曲は、どこかで『Wonderful & Beautiful』にも通じるところがあるかもしれないです。“一人”→“一人じゃない”→“みんな”みたいに、そんな広がりがあるところとかは。

■2008年は1月から5月までツアーですね。

藤巻:まー、すごい数だと思いますけど(笑)。本当だったらアルバムをリリースして、ということが多いんですけど、でも今回はそういうわけじゃなくて、『Wonderful & Beautiful』『茜空』『RUN/蛍』という曲でまわるんですよね。

神宮司:初めて見る人も、何度も見に来てくれてる人も、同じように楽しめるライブにしたいんです。新しいアルバムがないぶん、すでに出ている曲での構成なんですけど、もう何年もやってない曲もやってみようかって、そんなことも話しているんですけどね。

藤巻:そう思わせてくれるのも、『Wonderful & Beautiful』があるからなんですよ。この曲って、『朝顔』から『HORIZON』 までをつなげてくれる、そんな役割も果たすと思うんです。だから次のツアーでは、『朝顔』の曲もできるんじゃないかって思っていて……。 『HORIZON』のツアーのときは、あんまり入り込む余地がなかったんで。でも、この曲のマインドがあれば、あのころの曲もやってみようかって気にもな れる。実はそれが今の僕らにとってすごく重要だし、そういうレミオロメンを見てもらえるライブになるんじゃないのかなって思います。


■さらにツアーのリハまで新たなレコーディングが続いているということは、未発表曲の発表とかあったりして……。

藤巻:どうなるかわかりませんけど、ひょっとしたら“あ、今こんなのやってるんだ”みたいなことも見せられるのかもしれない。でもともかく ツアー中は、全国をまわりながらさまざまなものを拾い集めつつ、次に進んでいきたいなと思います。あとは、ここのところ大きな会場での20本くらいのツ アーが多かったので、見たくても見に来られなかった人も多かったと思うし、今回はしっかりみんなのところまで行きたいな、ということですね。そしてレミオ ロメンて、“こいつらが演奏してるんだな”ってことがわかるライブにしたいです。

前田:これでリハが始まったらね、さらにイメージも固まっていくでしょうけどね。


■ツアー楽しみにしてます。ありがとうごさいました。