2007年11月30日金曜日

interview with RIP SLYME

前作『EPOCH』から約1年ぶりに、待望の6thアルバム『FUNFAIR』がいよいよリリースされる。“移動遊園 地”との意味を持つ今作は、まさに遊園地に一歩足を踏み入れると誰もが童心に戻り、無邪気に楽しむことができる、ワクワク度120%の作品となっている。 それにしても、RIP SLYMEの遊園地には、さまざまなアトラクションが満載! ヒップホップを基軸にしつつも、一括りではカテゴライズできないジャンルレスな15曲、15 個のアトラクションが収録されており、いい意味で、今作は前作以上に雑多な感じ、バラエティ色がより色濃くなったアルバム作品といえるだろう。今回はメン バーを代表して、PESとRYO-Zの2人にインタビュー。これぞエンターティナーな、息のあった2人の爆笑トークをお楽しみあれ。

■アルバムを聴き終えて、まず思ったのが改めてRIP SLYMEすごいなと。

RYO-Z・PES:いやいやいやいや。とんでもございません。

■そんな謙虚な。とにかく聴いていて心地よかったというのが、素直な感想なんですけど。今作の制作は、いつぐらいから取り掛かられていたんですか?

PES:4月ぐらいからちょろちょろっと動きはじめて、夏には大体出来上がってましたね。

RYO-Z:今回は通常よりも立ち上げが早かっただけに、締め切りも早かったんですよ。でも、それを可能な限り伸ばしていって。で、結局、ギリギリになったんですけどね(笑)。

■でも、そこまで早い進行って珍しくないですか?

PES:この夏に出したシングルの「熱帯夜」は、昨年のタイミングでできていたし、アルバム曲の「I・N・G」なんか も、昨年の「ブロウ」というシングルのときだし、「Tales」も12月ぐらいに作った曲で。すでに今年始まった時点で3曲が出来上がっていたから、後は イメージ固めぐらいで。

RYO-Z:アルバムタイトルの『FUNFAIR』も、早い段階でDJ FUMIYA君が遊園地っていうワードを出してきたんで、それに乗っかって、じゃあ、“移動遊園地=『FUNFAIR』”にしようかと。作るうえでの指針 として、そういうのがあると早いですよね。そこから逸脱しないように向かっていけますから。

■まさにタイトルの『FUNFAIR』は、RIP SLYMEを象徴するタイトルですね。バラエティに富んだ選曲、構成になってますし。

RYO-Z:でも、実際「ジェットコースター」とか「メリーゴーランド」っていう曲があるわけではないんですけど(笑)。1枚聴いたムードがそういう風に感じてもらえるようにと思って。

PES:最初の頃は、アッパーなテンポのものが多かったので、スローな曲も入れようと、それぞれ作ってこようよという話になったら、そのあとのミーティングで、案の定スローな曲ばかりになって(笑)。

RYO-Z:まさにシーソーゲームだね(笑)。今回は見極め的なことも逆に早い段階で、ジャッジも淘汰されていって。で、かなりたくましい、強い曲たちが残っていき、それらがギュッと詰まったのがこのアルバムと。

PES:最終的に、いろんな楽曲がバランスよく入ったよね。でも、相変わらず前のアルバムから入れようって入らなかった曲があって。

RYO-Z:あ~~! あれは手出しちゃいけないね。

PES:パンドラだね(笑)。

RYO-Z:いっそのこと「パンドラ」って曲名にしたいぐらいだね(笑)。

■入らなかった理由はどうして? 個性が強すぎるとか?

PES:トラック力も結構あるし、悪くはないんだけど、今回も残念ながら落選で。でも、ほっといたら危ないから、できるだけ早く出したほうがいいんだけどさ(笑)。

PES:でも、もしかしたらワインみたいに熟成される曲かもしれないし。

RYO-Z:いい感じのビンテージ感が。作ったのは2006年だから、ボジョレーヌーボだったら、今頃飲み頃なんだけどね(笑)。

■また今作は曲順も絶妙ですよね。もう、はじまりから一気に世界に引き込まれていって、思い切りアトラクションを楽しんで、最後はちょっと切なさも感じられるという。起承転結がハッキリしていて。

RYO-Z:実は最初は、イントロダクションも6パターンぐらいあって。そこから強い2パターンに絞られて、で、結構僕 とPES君はもう1つのほうがいいんじゃないの? って言っていたんだけど、いろいろ話し合って、これに落ち着いて、結果よかったなと。もう一個は、 ちょっと怖い感じだったんだよね。華やかさはどっちもあったんだけど、CD壊れたんじゃない? っていう、ガチャガチャガチャってなるシーケンスだったん で、オープニングから混乱を呼ぶんじゃないかということで、最終的に聞きやすさをとったという。

■今作はそういう意味では、スリリングな楽曲も多いですね。ちなみに楽曲ごとにみなさんがイメージしてるアトラクションみたいなものって、あったりするんですか?

PES:これは何ニーランドの何ブの海賊とか、何ラッシュマウンテンとか。何急ハイランドとか(笑)。

RYO-Z:何ニーランドって(笑)。

PES:最初は乗り物っぽいとか、これはなんであれはなんでってなんていうのもあったけど、“遊園地”ってテーマの時点で、「熱帯夜」「I・N・G」「Tales」の3曲が出来てたんで、そんなにアトラクションにしばられることもないだろうって。

■今作にはモンパチ(MONGOL800)さんとのコラボ作品「Remember」も収録されていたりと、アルバムならではの面白い試みも、たくさんなされていますね。

RYO-Z:ILMARI君がモンパチのメンバーと仲良くなって、「何かやれたらいいね~」的な感じで、2人でデモテー プを作ったりしてたんですよ。で、それを俺らにも聴かせてくれって、フライング気味で聴いてみたらこれはいいぞ、ぜひアルバムに! みたいな。それでモン パチのメンバーに東京にきてもらって、駆け足で作っていって。

PES:あと、今回は初めてフィメールのラッパーの子とか、RIPじゃない人たちが作った曲も混ざっていたりして。俺たち自身もフレッシュな感覚を味わえたし、聴いている人も新鮮じゃないかと。俺たちらしくて俺たちらしくない、俺たちらしくないのに俺たちらしいみたいな。

■ちなみにモンパチさんが東京にきたときは、みなさんでおもてなしをされたんですか?

PES:おもてなしをしようと思ったら、すぐ清作くんにもてなされました(笑)。

RYO-Z:清作くんのほうが東京事情に詳しくて。面目ない感じでしたね(笑)。

PES:おっしゃれ~なバーに連れて行ってもらってね、清作くんはこんなところでお酒飲んでるんかい? 

RYO-Z:いいね~。僕らもこれからそうしようって。

PES:名刺なんかもらってきちゃったりして(笑)。

■皆さんこそオシャレなバーや、芸能人御用達の隠れ家みたいな店に行かれてそうなイメージがありますけど。

PES・RYO-Z:いやいやいや。

PES:僕は最近、もっぱら家飲みなんですけど。芸能人がたくさんいるお店なんて行ってみたいもんだね~。

RYO-Z:触れてみたいもんだね~。できれば写真を1枚!(笑)。

PES:本当だよ。この間、勝どき橋にあるデニーズに行ったとき、このデニーズおしゃれだねって言ってたぐらいだからね(笑)。

RYO-Z:僕らはデニーズレベルだからね(笑)。おかわりコーヒーだけで何時間もねばりますからね(笑)。

■いい意味で、バリエーション豊富な料理があるデニーズと今作、RIP SLYMEの楽曲って共通するものがあるんじゃないかと。誰もが気軽に楽しめるという部分でも。今やトップアーティストのみなさんにも関わらず、そういう感覚を今でも持ちあわせているところが、素敵だなと思いますよ。

RYO-Z:まあ、言ってもワインは飲みますけど(笑)。

PES:RYO-Z君おしゃれやね~。やるね~。

RYO-Z:でも、そのワインはコンビニで買ってくるんだけどね(笑)。田崎真也コレクションはおすすめ! ほんとトップアーティストの仲間入り果たしたい! なのに、なかなかどうして。

PES:ギリギリぶっちぎらないところにいるのが、俺らだよね(笑)。

RYO-Z:結局飲みも5人で集まっちゃったりして(笑)。まさにそれを重ねて、このアルバムですから! 酒と男と女と遊園地ですから!(笑)。

■でも、そうはいっても、ラグジュアリー感、おしゃれ感がちゃんとある、親しみやってやすいんだけど、下町の遊園地って感じとは違うかなと。

RYO-Z:僕、完全に下町生まれ、下町育ちなんで。セレブっぽい奴、友達にいないですし(笑)。

PES:いてもただの顔見知り(笑)。まあ、「熱帯夜」のPVとか、「I・N・G」でネクタイなんかしめちゃったりして、エグゼクティブなムードを出しちゃったりはしてるけど。

RYO-Z:それはあるね。でもさ、毎回そうだけど、今みたいな出来立てほやほや期って比較的、まだまだあれやれたら、この曲こうできたのにな、っていうのがあるじゃん。で、しばらくしてライブとか、こうしたインタビューを通して、曲がどんどん自分たちのものになっていって、曲に対する解釈も深まっていくんだけど、今回のアルバムは、出来立てほやほや期の今の段階でも、すでにみんなのうなずきが“う~ん”ってすごく大きいんだよね。まあ、時間かけて作った甲斐があるのかなと。

■現時点で、みなさんにとって今作は最高傑作だと。

RYO-Z:「ハイ!」とここは言い切っときましょう。でも、前のアルバムの立場いつも考えちゃうんですけどね(笑)。

PES:末っ子は一番かわいいからね(笑)。

RYO-Z:いいね~その表現。まあ、どの子もかわいいことには変わりないんだけど。

PES:でも、唯一長男だけは…

RYO-Z:断然出来悪いな(笑)。

■でも、今作は今のみなさんの愛情をたっぷりと受けて…

RYO-Z:すくすくと。

PES:正味、一番金もかけて育ててますからね(笑)。

RYO-Z:手塩にかけて。ビールを混ぜて、おいしいお肉に仕上げました。

PES:牛かいな(笑)。

■相変わらず音を楽しんでいるなっていうのが、今作からも伝わってきたのですが。音楽を作る作業って、産みの苦しみがある人が多いと思うんですけど、今回はいかがでしたか?

PES:多少はありましたけど、今回は比較的安産でしたね。まあ、早くから力んだからね(笑)。いつもは時間に追われて、スケジュールを先に決めてから、アルバム作業に取り掛かるんだけど、今回はかなり前から準備してたこともあって、結構同時進行でいけたというか。とはいっても、最後はギリギリだったけどね。

■詰めの段階、最終作業で時間がかかったと?

PES:ずっとダラダラしていたのが、最後の一週間で一気にどうにかしようと。夏休み(の宿題)と一緒ですよ(笑)。

RYO-Z:俺なんて始業式から(宿題)スタートしたからね(笑)。夏休みは寝なくていいし、いつ起きてもいいし。そのころからずっと無計画な生きかたしてるな、俺(笑)。

■メンバーみなさん無計画派だったりするんですか?

RYO-Z:メンバーもみんなそんな感じじゃない?

PES:だね。

RYO-Z:でも、俺、結婚してるのに無計画はまずいよな(笑)。

PES:そうだよ。俺は無計画と豪語しても、誰にも迷惑かかんないからいいけど。

RYO-Z:家族計画っていうもんな~(しみじみ)。改めないとな。

PES:これから、これから。でもさ、前作に比べると、今回はみんなでミーティングしたりとか、コミュニケーションを密にとって、次に何をしようとか、計画性が若干出てきたよね。

■ちなみにつねに先陣きって提案されたり、召集される方はいらっしゃるんですか?

PES:そのつどそのつど、だよね。

RYO-Z:気づいた人が、これやっといたほうがいいんじゃねえって。

PES:例えば、SUさんだったらライブのことだったり、DJ FUMIYAだったら音的なこととか。今回は特にいい感じで、分業が進んでいたよね。

RYO-Z:よりほったらかし関係になってたよね。とにかく任せたことに関しては、根拠のない反論はしないという。

PES:「これ、何か嫌だじゃ」許さないよね(笑)。

■暗黙のルールみたいな(笑)。

RYO-Z:それはあったね。このアルバムを聴いた人も、とにかく根拠のない反論だけは許しませんので(笑)。まあ、無理に聴いてくださいとは言わないですけど、一回耳にしてくれたら、楽しめるんじゃないかと。

PES:あんま深く考えず、気軽に聴いて、自由に楽しんでもらえたらと思います。

2007年11月29日木曜日

interview with - Dragon Ash

パンク、ハードコア、ヒップホップ、ドラムンベース、エレクトロニカ、ラテンなどなど。さまざまな音楽要素を飲み込みながら、アルバムごとにガラリとそのサウンドを進化させてきたDragon Ash。ダブルミリオンを記録した1999年のアルバム『Viva La Revolution』で大きな注目を集めたときも、メディアへの露出は最低限。そんな独自のスタイルを貫き、音楽的にもスタンス的にも、常にオルタナティブな道を歩み続けてきた彼ら。2007年、デビュー10周年の記念すべき年に完成した7作目のアルバム『INDEPENDIENTE』。スペイン語で“孤高”を意味するタイトルが付けられたその作品は、まさにこの10年の歩みなくしては完成しなかった1枚だ。


■Dragon Ashは今年でデビュー10周年を迎えるわけですが、当初はKj+桜井誠+IKUZONEの3ピースバンドとしてスタートしたんですよね。

Kj:そうですね。もっと前はサク(桜井)とおれと、女の子がベースをやってたんですけど。で、いろいろあってサクとおれのふたりでドラムンベース(ドラム+ベース)になって。で、IKUZONEがベースで入って、(自分が)ギター&ボーカルをやることになって……。


■その後も、アルバムごとにサウンドやスタイルを発展させながら、7人編成のバンドとなる現在に至るわけで。そんな10年のなかで、“正直このときはピンチだった”っていう瞬間はありましたか? はたから見てると、『HARVEST』が出る前の時期がそうだった気がするんですけどね。ちょうど土下座の看板(※編集部注)のころとか。

桜井:あ~、懐かしいね(笑)。それより何より、『陽はまたのぼりくりかえす』を出して売れなかったら、“じゃあもう辞めよっか”って話になってたよね。

Kj:そうだよね。あっちのほうが全然ピンチだよね。完全に解散方向だったからね。あのときは危なかった、マジで(笑)。『Buzz Songs』がある程度売れたっていうか、一定のラインを超えたので、良かったっていうか。


■そういえば、『陽はまたのぼりくりかえす』を出してすぐぐらいのときに、それまで「ライブはキライ」って言ってたKjが、「初めてライブが楽しいと思った」って言ってたのを覚えてますね~。

Kj:ああ~。仙台のライブだったかな? あれ、普通に公園でやってる“祭り”だったんだよね(一同爆笑)。

桜井:大阪のライブでは『六甲おろし』のSEで出て、ドン引きされたからね(笑)。あのころ、“ブラボーナイト”ってイベントではもう、ダントツで人気なかったし(一同爆笑)。

Kj:いやもう、マジ任せてよ(笑)。“ブラボー~”はvol.3ぐらいまで出たからね。みんな卒業していくのにずっといっから(笑)。「またDragonいるなぁ」って(爆笑)。


※編集部注:『LILY OF DA VALLEY』(2001年)から、『HARVEST』(2003年)の間にリリースされる予定だった新作が完成せず、メンバー全員が謝罪の土下座をする巨大なビルボードが渋谷の駅前に登場した。

■ここまでの話からすると、やはりバンドのターニングポイントとなった作品といえば……。

Kj:やっぱり『Buzz songs』じゃないですかね。あと、『HARVEST』 かな。曲の作り方とかフォーマットとか、(今も)ベースにあるのは『Buzz songs』のときの感じだし。ライブで共感できるようになる曲をやり出して、共感してくれる人たちが増えて、ワンマンライブで充実した時間を過ごせるよ うになってきて。そのころからBOTSくんもバンドに参加するようになったし。いろんなことがあそこから良いふうに転がったっていうか。


■初期Dragon Ashのサウンドフォーマットが完成した1枚であり、今も多くのフォロワーが生まれ続けてる1枚でもありますしね。

Kj:うれしいことですよね。


■そんなふうに進化しながら歩んできたDragon Ashですが、日本の音楽シーンにおいてどういうスタンスにいると自分たちではとらえていますか?

DRI-V:同じようなバンドがいないっていうところで言えば、やっぱり特別なバンドだと思いますけどね。

ATSUSHI:純粋に、飽くなき追求をし続けてるバンドなんじゃないでしょうかね。(音楽性やスタイルは)いろいろ変わってきたと思うんですけど、Dragon Ashとしての太い柱は変わってないっていうか。

HIROKI:おれはもともとバンドに入る前から、カッコいいっていうか、日本の音楽シーンのなかでも、ハイクオリティーな音楽を作ってるバンドだなぁって思ってはいましたけどね。

BOTS:まぁ、 日本のチャート番組とかに出てくる人たちに比べて、テレビに出てないとか、露出が少ないっていうところでは、やっぱ異質なイメージがあるかもね。でも チャートの上位にいる人たちのなかにも、クリエイティブな志を持ってやってる人は超いっぱいいると思うし……。でもおれが思うDragon Ashの、主に降谷建志の作る曲のいいところは、日本人がやるとけっこうダサくなっちゃいがちなところを、すごくスマートに、カッコ良く、聴きやすくする 感じじゃないかなぁって。だから(露出が少なくても楽曲が)チャートに入ってくるんじゃないかなぁって思うんだよね。

桜井:紅白も出たことないしね(笑)。『Viva La Revolution』 が売れて、わりとあれはメディアが持ち上げて、みたいなとこがあったじゃないですか。別におれらが(積極的にメディアに)出たわけじゃなくて、結果的にあ あいう形になったと思うんですけど。でもそのあとも全然テレビとかにも出ないし、「何なの、この人たちは」みたいな。親からもそう言われ(一同爆笑)。だ からいまだに、「ヒップホップっぽいことやってる人たちでしょ?」って言われたりもするし。そのわりには、チャートとかをとおして一般リスナーの耳にも (新曲が)入ってたりして。まぁ、それはそれでいいんじゃないかと思いますけどね。


■そして、ついに7作目のアルバム『INDEPENDIENTE』が完成しましたね。今作でも、前作『Rio de Emocion』からの流れを感じる“ラテン”の要素が大きな役割を果たしていると思うのですが。

IKUZONE:別にこちとらラテンの血なんて流れちゃござんせんってことなんだけど(笑)、(演奏してても)イイなって思うから、自然と そうなったってことなんだろうね。リズム隊としては、求められるものは相当シビアではあるんだけど。でもそれはそれで別に毎度のことなんで、楽しんでやっ てますからね。

桜井:だってさ、アレンジとかは違うけど、昔の曲とかとけっこう共通点はある感じがするんだよね。使ってる楽器とかによってカラーがラテンとかに寄ってるだけであって。芯(しん)はそんなに変わってないんじゃないのって。

Kj:まぁでも、メロっぽい(メロディが立ってる)感じは確実にするよね。シングルほどじゃないし、もっとリズムを強調してるとは思うけど。


■“歌”が映える曲が多いですもんね。

BOTS:あと、『Rio de Emocion』以降、音が有機的になってきてると思うんだよね。


■てことは、音の質感的には『Rio de Emocion』である程度の基盤ができていたっていうことなんですかね?

BOTS:今回に関してはね。


■そういう意味でも『INDEPENDIENTE』は『Rio de Emocion』の延長線上にあるアルバムだとして、作り手として前作以上に飛躍したと思う点はどこですか?

桜井:それはもうね、アルバム買って聴き比べてもうらうのがいちばんですよね。決定的に違うからね(笑)。

BOTS:度肝を抜かれるからね(笑)。

ATSUSHI:覚悟しといたほうがいいと思うよ。


■ちなみに今回、前作にも参加されていた武田真治さんがサックスで、新たにフィーチャリングでケツメイシの大蔵さんが参加されてますよね。

Kj:今回ゲストはそのふたりだけですね。それ以上のフィーチャリングは(時間的に)できないっていう感じだったから。いやもう、全然アイデアもいっぱいあるし、いろいろやりたいとは思ってたし、思ってるけど、(時間的に)限界でしたね。


■それなら、ぜひそれを次のアルバムで実現してもらいたいところなのですが……。

Kj:うん、そうッスね。


■そして、そこへ続くDragon Ashの“今後”が、なるべく近いうちにスタートするといいなぁって思いますけどね。

Kj:それはどうでしょうね。それはちょっと、軽率な発言はできないなって感じですねぇ。


■Dragon Ashの“今”が反映されている点ではもちろんですが、『INDEPENDIENTE』は、日本のポピュラー音楽シーンにおいても、すごくハイクオリティーなアルバムだと思うんです。楽曲の構成といい、サウンドのセンスといい、もはや別格といってもいいぐらいに。

Kj:おお~っ。うれしい。ほめられたぁ(笑)。


■ほめてます(笑)。日本のメジャーシーンにおいて、『INDEPENDIENTE』=“孤高”の存在だなと改めて思える1枚というか。

BOTS:あれぇ~。

Kj:おおっ、すげー。おれ、マジやってて良かったぁ~。なぁ? サク! いや、マジでやってて良かったなぁ? デビュー前に切られそうになってたからなぁ(一同大爆笑)。

桜井:ギリギリ土俵際でしたからね。

Kj:おれはもう、「サクとでなきゃやれない」っつって。

桜井:ほんと、ヤバかったです(笑)。


■そんなことも乗り越えてきたからこそ今のDragon Ashがある、と(笑)。ところで、3月からは待望の全国ツアー「Dragon Ash Tour~DEVELOP THE MUSIC~」がスタートしますよね。久々のツアーはどんな内容になりそうですか?

桜井:うちのバンドは、アルバムを出すと(その際のツアーでは)ほぼアルバムの曲を全部やるというスタイルを貫いておりますので、また新し い形で(新曲を)お届けするという感じじゃないでしょうか。詳しくは見てのお楽しみですが。まぁ、そこらへんの意気込みはもう、うちの代表の千葉(DRI -V)から。

Kj:広報の千葉から……(小声で)猪(ちょ)突?

BOTS:ほら、今年はイノシシ年だし、(小声で)猪(ちょ)突猛……。

DRI-V:猛……“千葉”?

BOT今すぐ保存S:はい、猪(ちょ)突猛“千葉”いただきました! ということで、今年は猪(ちょ)突猛“千葉”の勢いで頑張っていきます。Dragon Ashでした~。

桜井:猪(ちょ)突猛“千葉”っつったら本当に行きたくなってくるよね!

Kj:間違いなくみんな来るよ(笑)。

2007年11月28日水曜日

interview with - B'z

 実績の積み重ねでゆっくりと成熟しながらも、常に未来を力強く切り開いていく、目のさめるようなフレッシュネスを保ち続けているB'z。2007年9月21日より結成20周年目に突入した彼らが、16枚目となるオリジナル・ニューアルバム『ACTION』 をリリースする。名声や記録に決して寄りかかることをせず、音楽的冒険心と大いなるチャレンジ精神で次々と金字塔を打ち立ててきた彼ららしく、新作は全 17曲収録という圧巻! のフルボリューム。しかもバリエーションが豊富で、ベクトルも多彩。未来へ向けてのさらなる“攻め”のアティテュードが明確に表 れた、重厚かつ痛快な1枚だ。


■“コンセプト、テーマを立てない”というのが、B'zのアルバム制作に対する基本的なスタンスですけれども。今作はこれまで同様、新しく曲ができるたびに録っていく、という形だったのでしょうか?

松本:そうですね。去年、映画(「俺は、君のためにこそ死ににいく)」)のために『永遠の翼』を書き下ろしたところがアルバムに向けてのスタート、だったんですけれど。そこから“できた曲から順番に”という形です。ただ、今回は時間もたっぷりあったので、ゆっくりと時間をかけてやりました。

稲葉:あまりペースを詰めすぎないようにして、そのなかでコンスタントに結果を出しながら進めていった、という感じです。


■その“ゆっくり”のなかで、どのように流れや向かう所を考えながら進めていったのですか?

松本:今回は、ここ何作かでやってきたジャムセッションではなくて、東京で完ぺきにデモを作り込んでしまってロスには(楽器の)ダビングだ けに行く、というやり方に変えたんです。実は年明けに一度、何曲ぶんかのメロディーを持ってロスに行ったんですよね。で、参加してくれるミュージシャンた ちと一緒にスタジオに入ってセッションしながら曲を形にしていこう、と思っていたんですけれど……芳しい結果が出なくて。正直、ドン底に近い気分になるぐ らい結果が出なかったんです。

稲葉:ケミストリーが起きなかった、というか。たぶん、何かがかみ合ってなかったんだと思うんですけれど。

松本:で、 一度すべてをフラットにして、東京に戻ってプリプロダクション(※編集部注)からやり直したんです。そこでまず、新しい曲からトライしていって、そのあと にロスに持っていった曲から選び抜いたものを形にして。その作業を5月までやって、そこから再びロスにレコーディングのために行きました。


■リスタートしてからはスムースに?

松本:ええ。初日からもう、フルコーラスを1日で形にして、といういつものペースになって。そこからすぐ、波に乗りました。

稲葉:アレンジの段階で詞のアイデアも生まれたし。良いリスタートを切れましたね。


※編集部注 / レコーディング前に曲の構成やアレンジを詰める作業のこと


■東京での制作のなかで、フックになった楽曲というのはどの曲だったのでしょうか。

松本:『黒い青春』、『純情ACTION』……。

稲葉:『パーフェクトライフ』とかも“おもしろいな”っていう話をしながらやっていました。


■けっこうクセのある曲が挙がってきますね。それはやはり、B'z自身が今回の制作において自分たちにとって刺激のある曲を求めていた、ということの表れでもあるのでしょうか?

松本:うん、それはあるでしょうね。もう、長い間活動してきてますからね。だから今回は、曲の構成が今までのB'zとは違って、複雑という かいろんなセクションが出てくる……。そういうのはもう、ホント意識的にやっていましたから。アレンジを固めていくときにも、2番までいったらその場で違 うセクションの歌のメロディーも創ったりもしていたし。とにかく、“AメロBメロCメロ(※編集部注)を繰り返して間奏、そしてコーラスを続けて終わり” みたいなものは絶対にやりたくなかったので。


■『光芒』とか、最後にまったく色の違う大サビが出てきますし。そういうことですよね?

稲葉:はい。あのセクションは、あとから考えて作りましたから。

松本:『光芒』は、やっていくうちにどんどん大作になっていたんです。これは楽しかったですね、やっていて。あと、“シャッフルの曲がやりたいな”と思って創り始めた『HOMETOWN BOYS' MARCH』も、予想以上におもしろい展開の曲にできたと思います。


■では、再びロスに向かってからのミュージシャンたちとの作業のなかで、新しくアイデアが生まれて広がっていった楽曲というのもあったのでしょうか?

稲葉:『トラベリンメンのテーマ』ですね。最高に笑いましたよ、これは(笑)。

松本:ものすごく分厚い、“ビートルズがどのようにレコーディングしてきたか”っていうことが書かれている本があるんですけど。これがもう、エンジニアの人以外には全然おもしろくない本なんだけど(爆笑)。それをジェイ・バウムガードナー(エンジニア)が持ってきて。で、シェーン・ガラース(ドラムス)も大好きなんですよ、そういうのが。だから、この曲はその本に書いてあるリンゴ・スターの ドラムのマイキングを参考にして、ドラムのマイクの位置を決めて。しかも、ショーン・ハーレー(ベース)がまた、ヘフナーのバイオリン・ベースを持ってき て……。ですから、この曲のリズムセクションはビートルズ・スタイルで録ったんです(笑)。でも、すっごく音がいいんですよ、これ。

稲葉:スピーカーからフィードバックの音が出た瞬間、シェーン自身バカ受けしてた(笑)。でもそうやって、みんなが前向きなアイデアを持ってのぞんでいたので、ロスでのレコーディングの現場もとてもいい感じでしたね。


※編集部注 / Aメロ:歌いだしの部分、Bメロ:サビへと展開する部分、Cメロ:Bメロの次にくるメロディー


■ところで、今回のアルバムは、ギターサウンドの重めのものが比較的少ない印象を受けたのですが。全体的に軽やかというか。

松本:アルバムをとおして? いや、そうでもないと思いますけど。


■音色やフレーズはすごく繊細に響いてくるんですけれど、そのぶん重戦車級のリフものとかが……。例えば、『MONSTER』とか『BIG MACHINE』みたいなタイプのアプローチが見当たらないような気がしたんです。

稲葉:ゴンゴンゴン! ってやつですね(笑)。

松本:あぁ、なるほど。でもそれは、けっこうキャッチーに聴 こえてる、ってことじゃないですか。同じぐらいの音質で、『黒い青春』にはローがずっと入ってるし。『純情ACTION』にもけっこう重い音が入ってるん ですよね。ただ、今回はギターの録り方を変えてみましたし、アンプも僕のではなくてジェイが持ってきたのを使ったりとかもしてるので。だから、音は以前と はちょっと違いますよね。あと、アルバムをとおして“変わらなきゃ”っていう意識があったので。あまり自分だけで固まらないでとか、いろんなことにトライ してみるとか……そういう部分が表れてるんじゃないかな。


■そして、歌詞についてなんですけれども。“陰日向”でいうと、“陰”のほうで必至に生き抜いている人物が描かれたものが中心になっている印象を受けたのですが。

稲葉:それは、自分の状況がそういうふうに書かせる状況にあったからだと思うんですけれど。“光”という言葉が最初から道しるべとしてあっ たわけではないんですが、後半になって“光に向かってもがき苦しむ”とか“突き進む”“葛藤(かっとう)する”っていう場面が多いことに自分でも気がつい て。で、“光”というのが(全体的な)テーマなんだな、と。それで、それをタイトルにもしたいなと思っていたんですけど、最終的には“光に向かって何かし らのアクションを起こす”というイメージから“ACTION”という言葉がアルバムタイトルになったんですよね。だから……光に向かっている、ということ は陰にいるっていうことだから、今のその指摘はすごい正しいと思います。


■今おっしゃった“自分の状況”にあったその背景、というのは?

稲葉:それはもう、普通に話してたりニュース見てたり……そういう状態はいっぱいあるので、今だから歌うっていうことではないんですけど。 いつの時代もそうなので。それに、特に答えっていうのもないし。で、結局自分も答えをあまり提示できないので“どうしようかな”とも思ってましたし。でも 『光芒』の最後で、“結局本人は光のところに出られるかわからないんだけれど、それに向かっている姿がだれかにとっての光になればいいんじゃないか”とい う結論に達しまして。うん、そこでアルバムを作っている自分のなかで……解決じゃないですけど、ある種の結論も得られたな、って。書いてるときはそんなに 思ってなかったんですけど、できあがって聴いてその部分にくると“たしかに!”と思ったりするので。

2007年11月27日火曜日

interview with - BONNIE PINK

 BONNIE PINKが、オリジナルとしては約2年ぶりにニューアルバム『Thinking Out Loud』をリリース。前作『Golden Tears』や『A Perfect Sky』 に参加していたスウェーデンのプロデューサーチーム、バーニング・チキンと作り上げた本作は、シンプルなロックサウンドを基調とした、ハンドメイド感たっ ぷりの味わい深い逸品に仕上がった。アルバム制作秘話や昨年のブレイク時の心境、秋に控えた初武道館公演まで、今のBONNIE PINKのモードをたっぷりと聞きました。


■新作はどんなイメージで作ったんですか?

BONNIE PINK:乱暴に言っちゃうとロックというか。私の荒削りな部分、きれいにこざっぱりまとまってはいない作品。素の顔やダークサイド。そういうものを素直に表現した曲が入ってるんです。


■曲作りはいつごろから?

BONNIE PINK:今年の1月、2月と病気で寝込んでいて、そのあと病み上がりで書いた曲たちなんですよ。だから歌詞の内容は、いつ もよりちょっと疲れてるかも(笑)。でも、「ブルーだ……」って落ち込むんじゃなくて、「ブルーだ!」って暴れるような。そっちのほうに持って行きたいな と思って作ったんです。


■『Water Me』以外は、バーニング・チキンがプロデュース。彼ら3人とは年齢が近くて共通言語が多いとか。

BONNIE PINK:ですね。あと、プログラミングも幅広く駆使する人たちなんだけど、バンド活動もしている人たちなので、バンドで作 り出すグルーヴみたいなものを今回は特に大切にしてもらいました。それに私が提示するアイデアってどこかどうしても女性的な気がしていて。なので、男性目 線であったり、日ごろバンドをやってる人たちの発想とか、私にないものを彼らに求めたんです。


■実際、音にはハンドメイド感があるし、シンセやドラムの音色に70~80年代のテイストも感じました。

BONNIE PINK:そうですね。温故知新っていう感じ。何が良くて、何を取り入れて、何を削ってっていう話は毎日していましたし、わりと時間と頭脳を駆使して(笑)、どの曲も録ってる。スウェーデン人の感性と私の感性がいい感じにブレンドされたんじゃないかなって思ってます。


■スウェーデンには2か月滞在されたそうですが、レコーディング中にハプニングはありました?

BONNIE PINK:スウェーデン人って、基本エコなんでほとんどの人が自転車通勤なんですね。そしたら彼らのふたりが自転車を同じ週 に3台盗まれちゃったり(苦笑)。あとはメンバーのひとりの持病が再発しちゃうとか、スタジオの1階部分に空き巣が入るとか。私も最後のほうで、キャベツ を切ってて親指をブスッと切っちゃって。出血で「ふぅ~」ってなってた(笑)。だから、「ハプニング続きだね、わはは」って言いながらアルバム作ってまし た(笑)。

■本作には『A Perfect Sky』以降のシングル曲を収録。その曲が別バージョンで収められているのもうれしいですね。

BONNIE PINK:この曲はBONNIE PINKの 最近の代表曲になりましたけど、それがどのオリジナルアルバムにも属してないっていうのはすごく違和感があって。でも、シングルをそのまま入れるのもしの びないなと思って、ひと粒で2度おいしい感じにしようと思ったんです。後半はオリジナルなんですが、前半はリアレンジをして雄大なストリングスの上にメロ ディーがただよってるというか、そういうサウンドにした。また違った雰囲気で聴けるんじゃないかって思ってます。


■『Broken hearts,citylights and me just thinking out loud』はどんな思いで書いた曲なんですか?

BONNIE PINK:これは向こうに行ってから書いた曲で。街の雑踏のなかで孤独を感じることってあると思うんですけど、そんな 「あぁ、人は人だなぁ」みたいなことをボソッと言ってる自分を書いてるんです。結局、街はそんな人だらけっていうか。みんなそうなんじゃないの? ってい う。だからどうしなきゃいけないとかも言ってないし、わりとクールな視線で。


■どうしてそういう曲を書こうと?

BONNIE PINK:昨今、人とかかわるのが苦手な人が増えてるという印象があって。職種にもよるけど、家のなかで生活が完結している 人が増えてたりとか、孤独率が上がっている気がするんです。で、それをそのまま描写してるんですけど、今は自分から意識しないと勝手に孤独になっていくよ うな街の仕組みができてる気がしていて。もっと人と付き合っていくことに能動的になったほうがいいんじゃないかなって。それをみんなにも感じてほしくて、 この曲のタイトルの最後のフレーズをアルバムタイトルにしたんです。自分で思ってることをひとり言で終えるんじゃなくて、とりあえず外に発して、だれかに 聴き取ってもらって、それを連鎖させていくっていう。もっとloudに、louderにしていったほうが人とつながれて気持ち良くなれるんじゃないかって いう願いが入ってるんです。


■実際、BONNIE PINKさんは思いを外に出せるタイプなんですか?

BONNIE PINK:昔に比べて出すのは上手になりました。昔は気をつかいすぎてすごい疲れてたんです。だけど、気をつかっても相手は 私が気をつかってることに気づいてないことが多いなってことに気づいて(笑)。1998年から2000年までニューヨークに滞在してたんですけど、そこで 自分らしく生きる大切さや思ったことを口に出す必要性を学んだし、それ以降はもっとラクにいこう、もっと人に甘えていこうと思うようになった。気をつかう ときとリラックスするときの切り替えが上手になってきたっていう感じですね。

■昨年は、映画「嫌われ松子の一生」で映画初出演、その主題歌『LOVE IS BUBBLE』、『A Perfect Sky』とヒットが続きました。それを受けて、心境の変化はありましたか?

BONNIE PINK:映画の曲は、撮影の半年前の2004年末に書いていたんですね。で、資生堂のCMソングの話が来たのが2005年 の末。それまで、人からこういうのを書いてくださいとか、そういうオファーを受けたことがあまりなかったので、すごくうれしかったんですよ。その期待に応 えたいっていうのもあるし、作家魂をくすぐられたというか。ソングライターとして求めてもらえるところまで来たんだっていう自信がついたところはあります ね。


■ベスト盤『Every Single Day-Complete BONNIE PINK(1995-2006)-』で初めてBONNIE PINKの音楽に触れた人も多いと思います。そこで、ライブなどに関して、どこか新しいスイッチが入ったところはありますか?

BONNIE PINK:そうですね。去年のツアーとかは曲に対する反応の違いに客層の変化を肌で感じたし。だからこそ、ライブはやりがい があるなって思いました。初めて聴く人にどれだけ印象を残せるかっていう。そういう意味では、ここにきてすごく新鮮。それまでの自分はコンサバになってた かもしれないから、そういう自分のマインドを入れ替えるいいきっかけになったと思うし、初心に帰れた気はしました。


■ところが、そうやって走ってきたら、今年1~2月に病気で寝込んじゃったと。

BONNIE PINK:そう(笑)。“紅白歌合戦”前に風邪をひいちゃって。紅白もギリギリだったんですけど、終わってホッとしたんで しょうね、打ち上げではしゃぎすぎて風邪をこじらせたんですよ(笑)。元日から声ガラガラで熱出して。とにかくせきが1日中止まらないんです。で、ずっと せきをしてるもんだから声帯も壊しちゃって。痙攣性(けいれんせい)発声障害を併発して、要はしゃべり声がふるえるんですよ。


■いつでもビブラート?(笑)

BONNIE PINK:そう(笑)。話すのも歌うのも音程のコントロールがきかない。で、医者にとにかくしゃべるなって言われて。ずっと家にこもっていて、何にもできなかった。一応、曲作り期間だったんだけど、作曲どころじゃないっていうか。もう「死んじゃうんじゃね?」みたいな(笑)。


■でも、結果的にオフが取れてリフレッシュもできたんじゃないですか? 災い転じて福となす、っていう。

BONNIE PINK:全然! ただの災い(笑)。遅れてきた大殺界って感じでした。「去年で終わってるはずなのに、なんで1月に来ん の!」みたいな。悔しいですね、2か月ロスした感じがして。まあ、こうやって話せるようになっただけハッピーですけど、あのときは、「私このまま半年くら いダメかもな」って思ってたんですよ。「最悪、歌手生命も……」とか。もう暗ーくなってたんです(苦笑)。


■じゃあ、明るい話をしましょう(笑)。スウェーデン滞在中に行ったインターネットライブはどうでした?

BONNIE PINK:楽しかったですね。ただ、お客さんが目の前にいないので不思議な感覚もありましたよ。どういうふうに見えてるかわからない状態でやってるから、必要以上に画面に手を振ったり、とりあえずいっぱい笑顔作っとくみたいな(笑)。


■『Thinking Out Loud』の初回盤にはその模様を収録したDVDが付きます。見どころは?

BONNIE PINK:見どころは、ヤンス・リンドゴード(バーニング・チキンのメンバー)が興奮しすぎてヘッドフォンがどーんと落ち たっていう(笑)。でも、それくらい盛り上がってたんですよ。無我夢中になってた。演奏した曲数は少なかったですけど、きっと楽しんでもらえたと思います し、この特典映像で見られなかった人にも楽しんでもらいたいです。


■ライブといえば、9月から全国ツアーが始まります。どんなステージになりそうですか?

BONNIE PINK:アルバムがわりと男気があるので、過去のそういうたぐいの曲もピックアップしてやろうかなと。去年のバンドメンバーにもうひとりギターを追加するので、ギターがフィーチャーされた曲が多くなりそうな気がしますね。


■ファッションのイメージでいうと、スカートよりはジーンズみたいな。

BONNIE PINK:うん。今回はジャケットもジーンズなんでね。今回、気分がジーパンだったんですよね。なんかマニッシュな感じとい うか、最近はモノトーンのなかに原色がばーんと一発入ってるっていうか、そういうのが気分なんです。だから足開いて座ってもOK、みたいな(笑)。そうい う気分でいこうかなって。


■ここのところのビジュアルにはフェミニンな感じがありましたが、かつてのBONNIE PINKのイメージに戻しつつあるんですか?

BONNIE PINK:そうですね。また違う波が来てて。最近は、女らしいとか、意外とかわいらしいもの好きとか、そういうふうに言われ ることも多くて。でも、それだけじゃないんで、そうじゃない部分をそろそろ出していかないと。かわいいほうへかわいいほうへ行っちゃうと、自分に違和感を 覚えるんですよ。だから、バランス良く進めていかないと。


■さて、ツアーは初の武道館公演でファイナルを迎えます。武道館に対する意気込みは?

BONNIE PINK:まだそんなにピンと来てないですね。「武道館だ、どうしよう!?」みたいな緊張感はまだ全然ないんですよ。でも、 バーニング・チキンをゲストに呼ぶのは決まっているし、ツアーの締めでもあるので、いろんな顔をそこで出したいなって。来た人に「いやぁ、楽しかった な」って帰ってもらえるような内容にしようと思ってます。普段使わないくせにスタンドマイクをあえて置いて、永ちゃんみたいにやってみるとか(笑)。あ と、とりあえず一発目に叫んでみます、ブドーカーン!! って(笑)。

2007年11月26日月曜日

Interview with - YUKI

 携帯電話のCMで流れる『ビスケット』とともに、そのキュートで元気な姿を久しぶりに見せてくれたYUKIが、8月8日、約1年ぶりとなるCDシングル『星屑サンセット』 をリリースした。YUKI初のドラマ主題歌となるこの曲は、TBS系ドラマ「パパとムスメの7日間」の主題歌としてオンエア中。かけがえのない大切な瞬間 が、キラキラと輝きながらエネルギッシュに駆け抜けるこの曲は、YUKIならではのポップさとせつなさを持ちながらも、これまでと違った肌触りを感じさせ る、YUKIの新たなスタート地点となる曲だ。


■『ビスケット』が配信されたと思ったら、あっという間に新曲のリリースですね。

YUKI:本当ですね。最近思うんですけど、自分が作りたいなと思う気持ち、作らなければいけない状況が目の前にあると、燃えちゃうタチみ たいです。それが、良くも悪くもインターバルがあまりなくやれているんです。だから、マイペースでやっているつもりなんですけど、けっこう止まらずにやっ ているみたいですね。この間もスタッフに、あまり私がゆっくりしているイメージがないって言われました。集中してやるときの切り替えが、たぶんすごいんで すね(笑)。


■この曲は、ドラマの主題歌ですが、曲はどういうふうに作り始めたんですか?

YUKI:主題歌のお話をいただいて、そこから曲を選んでいきました。ドラマのプロデューサーの方が、『ふがいないや』みたいに疾走感がある感じで、まだ青い果実のような歌がいいなというリクエストをしてくださったので、やりやすかったですね。


■ドラマの台本も先に読んでいたんですか?

YUKI:第1話の脚本と、原作の本をいただいて、原作を読んだあとに脚本を読んだら、そのまま上手にドラマになっていて、ちゃんと絵が見 えるようになっていたので、そこから歌詞は書いていきました。だから、かなりドラマに寄り添っていますね。でも、リクエストがありつつも、“YUKI”の シングルとして新しいものを作らないと私も納得いかないし、聴いている人たちも納得いかないと思うんです。そう思って、いちばん私の歌が響くところ、つま りメロディーがいいこと、という部分を重視しました。いいメロディーでありつつ、これは今まで私があまり歌ったことのないメロディーだと思います。


■ドラマのストーリーから、どういうふうに歌詞の世界を広げていったんですか?

YUKI:原作を読んだときにいちばん私が印象深かったのは、冒頭とラストの、パパが小さいころの娘のことを思うというシーンなんです。一 緒に海に行ったり、花火をしたり。娘の成長によって、どんどん家族は離ればなれになっていくんですけど、家族が共有し合っているものって何かなと思ったと き、夕焼けだったんです。夕焼け、花火、海。そういう一緒に見た風景なのかなと思ったんです。しかもそれは子どもが幼いころの、まだ家族が小さな集合体で いられるときの風景。でもそれは長かったようで、振り返ってみると一瞬なんです。夕焼けとか、流れ星とか、その家族との時間とか。この曲で書いているの は、そういう“一瞬のもの”なのかなと思います。


■『星屑サンセット』というのは、夕焼けが星屑のようにキラキラしているということなんですか?

YUKI:そうですね。「たったひとつの光」という言葉がサビにあるんですけど、10年、20年の間に通り過ぎていく流れ星というか、“願 いをかけたい!”と思う星や光は見逃してしまっていることも多いと思うんです。でも、大人になっていくと、それにすごく注意深くなっていく。子どものとき は自分のことで精一杯でまわりのことが見えないんですけど、大人になるにつれて、どんどん自分以外の人のことも、世界が広くなって見えていくんです。その ときに見つけられる光というのは、実は人生のなかに何回も出てこないと思うんです。


■それは具体的にいうと、どういうものなんですか?

YUKI:人生の大きな出来事に出合うときや、最愛の人に出会うとき。ターニングポイントっていうのかな。何年かに一度現れる希望の星。人 は、どんどん思いやりとかを覚えて、いい人間になろうと頑張っていくんだと思うんですけど、そういう努力をしている人にだけ見える光なんです、希望の光 は。


■そしてこの曲は、主人公の女の子が一生懸命走っているように、すごくキラキラしていますよね。それでいて、せつない部分もあったり。

YUKI:そうですね。この女の子が走らせてしまったんです。何かを成し遂げたり、たとえば文化祭とかで、みんなで作ったものを壊すときの あの悲しい感じって、今の16才にもあると思うし、その感じは出したいなと思ったんです。やっぱり流れ星に願いをかけるのは、ずっと昔からいつまでたって もあるような光景であってほしいし、夕焼けにちゃんと気づくような人類でいてほしい(笑)。100年後、私はいないけど、そういうふうであってほしいなと 思います。


■このドラマは家族がテーマですが、YUKIさんが思う家族って、どんなものですか?

YUKI:このドラマのお話も、コメディータッチでおもしろい話だったんですけど、私がひかれたのは、家族のぎこちない感じなんです。そう いう違和感のある関係はもともと私も感じていて、素肌にラップを巻かれた感じというか、いちばん近くていちばんイヤな存在というか。親子の、愛しているが ゆえの不器用な感じとか、大事に思っていることを伝えられない感じというか。


■そうですよね。恋愛の“愛”とは違いますよね。

YUKI:やっぱり日本の家族で、「愛してるよ」とは言わないですよね。「アイ・ラブ・ユー」を無理やり日本語にしただけで、言葉に出すのとは違うことだと思うんです、家族に対しての思いって。日本語で家族への愛を表現するのはすごく難しい。ひとことでは言えないんです。


■でも、この話のように、お父さんと中身が入れ替わったらとんでもないですよね(笑)。

YUKI:絶対ムリ! 1週間は長いですよ。私もあまり父としゃべらないから、この主人公の子のことはよくわかります。一緒にテーブルに 座っていても話すことがないし、向こうもしゃべりづらいんですよね、きっと。でも、それで嫌いだとか好きだとか、そういうのではない。その微妙なところが 私としては苦手なんです(笑)。


■親子って不思議な関係ですよね。

YUKI:このお話も、お父さんと娘だから成り立つんです。お父さんってかわいいでしょ。私ぐらいの年になると、男性を頼りにしたいという ことよりも、守ってあげなきゃとか、かわいらしいなとか、どちらかというとそういう目線になっているんです(笑)。そう思うと、このドラマの娘と父親のや りとりを見ていても、やっぱり彼女のほうがしっかりしていて、女ってこうなのかな、って思います。


■それにしてもテンションの高い曲ですよね。パワーが凝縮されてる。

YUKI:レコーディングがすごく楽しかったからだと思うんです。曲を作っているときがいちばん楽しいんです。そのテンションが曲のなかに 入ってしまうんだと思います。今は、新しい人たちとやるのもすごくおもしろくて、いろいろとアレンジを進めていくやりとりも楽しいんです。コンピュータだ けどフィジカルな感じ、というのを今目指していて、この曲はかなりそんな感じになっていると思うし、これからもっとなっていくと思います。これはかなり自 分のなかでも新しいんです。


■今回、音を作るときに、いちばん考えたところはどこですか?

YUKI:最初は、もっと80年代の感じがあって、もっとキラキラしていて、トゲや毒が何もない、かわいらしい感じだったんですけど、こう いう世界観であまりかわいらしすぎるほうにいってほしくないなと思ったんです。でも、今回新しくやってくれたエンジニアの中村くんが、ベースとベードラ (※編集部注)を前面に出してくるミックスをしていて、それがこういう情景と不思議にミックスされていておもしろくなりました。単純に、歌をもっと前に出 したい、いい歌を聴きたいなと思ったんです。今は、前衛的なものやざん新なものよりも、メロディーと詞がきちんと聴こえて、いい曲で、それでいてどこかは み出しているようなものをやりたいなと思います。歌入れのときも、歌っているとすごく力がわいてきて、私の持つエネルギーを歌に表そうと思って頑張りまし た。


■はい、めちゃめちゃ表れてます(笑)。しかも歌だけでなく、すべての音がパワフルですよね。

YUKI:そうですね。今はひとつひとつの音の個性を出していきたいと思っているんです。音をひとつひとつ、前よりももっと大事にできるよ うになってきたんだと思います。今回はかなりギリギリなスケジュールだったんですけど、その締めきりのある時間のなかで、奇跡は生まれるんですよね。


■そして、2年3か月ぶりのライブが決定しました! しかも大阪城ホールと日本武道館です。

YUKI:はい。本当にお待たせしました! 私もすごく楽しみです。大きな会場だと、ホールマジックというのがあって、ライブハウスとはま た違う魔法がかかって、音もすごく気持ちいい音で聴けるし、曲のメニューも最大限で見せられるんです。このライブでは、もちろん5年分のシングル曲もやろ うと思っているんですけど、私としては、5才の誕生日という気持ちが大きいんです。ハッピーバースデー、YUKI! なライブにしようと思っています。


■YUKIの5年分のものを見せつつ、最新のものも見せつつ。

YUKI:そうですね。もちろん新曲もやるだろうし。最近いただくファンレターが、中学生からとかすごく若くて、きっと初めて見る人も多い と思うんです。そういう人たちにも、震えるようなライブってこうなんだ! というようなライブのすごさを、10代の大事なときに見てほしいですね。そして 自分でも楽しみたいですね。


※編集部注 / ベースドラム、またはバスドラム。西洋音楽に使われる最も大きな太鼓

2007年11月25日日曜日

Interview with - L'Arc~en~Ciel (ken)

今回のL'Arc~en~Cielのニューアルバム『KISS』 は、あえてファン以外の、それも“最近突出したロックを聴いてないなぁ”と感じている人にオススメしたい。なんたってここには、とびきりR&Rでピースフ ルなクリスマスナンバーも、エッジを研ぎ澄ました人力ドラムンベースもすべてが並列してるうえに、未体験のサウンドスケープが展開されてるのだから。果た してラルクはなぜこんなにすさまじいアルバムを作るに至ったのか。アルバム、そして現在のバンドを象徴する代表的なシングル『MY HEART DRAWS A DREAM』『DAYBREAK'S BELL』の作曲者でもある、ギターのkenに経緯を話してもらった。


■今回、曲出しミーティングをしたときにどんなアルバムになりそうな予感がありましたか?

ken:メンバー4人で“このアルバムのコンセプトをこうしよう”とか“音質をこうしよう”とか……個別にはあると思うんですけど……全員 でしゃべることはなく。で、まぁ今回はいつもよりさらに個人で作ってくるデモが、より思いがわかる部分まで突き詰めたレベルで作ってあったんですよね。だ から、そこをさらにプッシュできるというか、そこにそれぞれの曲の色がなかったら、みんなでこんなアレンジがしたいっていうときに、色づけからしなきゃい けない気がするんですけど、色がもうあるんで、それをもっとさらに濃くしよう、濃くすればいいんだなっていうのは個々の曲が出てきたときに感じましたね。


■kenさんの作曲したナンバーはシングルになってる曲も多いですが、リリースの順番でいくと『MY HEART DRAWS A DREAM』はどれぐらい完成したデモで持っていったんですか?

ken:だいたい、そのシンセとかギターもほぼ(CDになったものと)一緒ですよね。で、ベースラインとかドラムの“ここにこんなんを入れたいな“っていうのもデモに入れて上げましたけど。


■なんかオソロシイ曲ですよね、これ(笑)。

ken:そうですか(笑)?


■パブロフの犬状態です。イントロが流れただけでダメです(笑)。

ken:(笑)。ヨダレ出ちゃいます?


■もう、脱力するし、同時に力わくし、みたいな変な状態に(笑)。

ken:あー、なんかわかります。そういう気分って、好きな音楽聴いたときになったりするじゃないですか? で、その曲作ってるときも……2年前かな? 前作の『AWAKE』 を引っさげたツアーと、「ASIALIVE2005」っていうのを連チャンでやって。その前まで、音楽を聴くことにちょっと飽きてたとこもあるかもしれな いんです。CD聴いてもラジオから流れてくるものも、わりと“へー……(興味ない感じ)”みたいな。でも、そのライブをとおして、“あれっ? ちょっとお もしろいことができそうな気がする”って思えたんですよ。で、“いや、絶対ある。驚けるよ、これ”って思ってツアーが終わったんです。そこからしばらく休 憩のときに、もうなんだろ? 自分がホントに心の底から驚けるものを作りたいなと思って。“なんかいいなぁ”とか“悲しいなぁ、良い曲だなぁ”とかそうい う意味じゃなくて、驚ける曲以外はもう作んない! みたいな気分だったんです。そのときにパッと『MY HEART DRAWS A DREAM』のイントロ、メインのメロディーができてきて、パッと書きました。

■言葉が意味を内包して音楽化するってこういうことか? と思いました。hydeさんが「夢を描くよ」って歌う、その音自体が夢を描いてるというか。

ken:うん(笑)。あと、そのツアーのときに感じたもうひとつの要素として、僕、その……洋楽とかを聴いて、ある種言葉を知らずに音だけ を聴いて“カッコいい!”なんて言ってたんですね。ラルクやってるのにある種、邦楽スッ飛ばしたままだったんです。やっぱ自分たちで言葉を吐くほうの音楽 をやっているとは気付いてるハズなんですけど、意識が薄かったと思うんです。でも、そのツアーをとおして、ライブしながら音聴こえるじゃないですか? そ のとき、hydeの言葉がどんどん入ってくるワケですね。言葉って、曲を作って演奏するとか、レコーディングするとか、いわば“曲にする”っていうときに すごい重要だなって。そーれは……“なんで今ごろ気付いてんだろう?”みたいな感じだったですけど(笑)。


■15年たって(笑)。

ken:15年たって(笑)。それでその『MY HEART DRAWS A DREAM』を書いて、hydeの詞が乗ってそこでホントに思ってた驚きがきて。“あ、やっぱ驚かしてくれたよ”と思って、すごいうれしかったですよね。


■それはうれしいでしょうね。ところで、そのkenさんの“驚きたい”っていうテーマは、音楽を聴いてもおもしろくないっていうところからきてたんですよね。もうちょっと具体的に聞いてもいいですか?

ken:いや、うーんとね、ちょっとまぁヒップホップが大流行だったじゃないですか? もう何をどうしてもヒップホップがキテるときは、メ ロディーがある音楽をすること自体、メロディーがあることが悪、みたいな空気を感じてたんですよね。で、時間がたって、いいものというかマインドがすばら しいものはすばらしく聴こえるし、そうじゃないものは淘汰(とうた)されて、フツウのメロディーがある音楽と一緒の感覚の扱いに世間がなったと思うんです よ、去年ぐらいから……。何、質問されたんでしたっけ(笑)?


■(笑)。いや、でも皮肉なことですよね、その後、歌モノ・ヒップホップ全盛になりましたからね。

ken:あ……だから、そういうときが過ぎて、よけいラクになりましたね。ヒップホップもかっこいいのは大好きですよ。あと、ロックとかの “激しい”の意味を、ある側面から“こうしとけば激しく聴こえる”っていうフォーマットができちゃってた時期もあったと思う。オリジナルじゃなくても、す ごい迫力があるものはいいと思うんだけど、“そうしとけばいい”っていうのが流れてきた瞬間に楽しめない気持ちはありましたね。


■じゃあ、ないんなら自分が作ってやろうって気持ちも?

ken:L'Arc~en~Cielというバンドにいるというところと、ちょうどアルバムを作るというところで、それはそうだったかもしれないです。

■で、このアルバムはホントに一気に聴けちゃうんですが、なんなんでしょうね? この明るさというか前向きさというか。

ken:うーんと、その、まぁ直接聞いたんじゃなくてhydeがインタビューに答えてる雑誌読んで気付いたんですけど(笑)。


■遠まわしなバンドですね(笑)。

ken:hyde自体は、ポップなことにかかわってたんだよね?(スタッフに聞く)斜め読みだから、何がポップなことかはちょっとわかんな いですけど、“ポップなことを意識してた”みたいなことを言ってたので、その部分の要素がアルバムのそこの部分を増幅してるんじゃないでしょうかね。


■15周年のライブのとき、hydeさんはMCで“歌うことがすごく楽しくなった”とおっしゃってましたけど。

ken:ねぇ? けどあれね、本心なのか本心じゃないのかぜんっぜんわかんないんですよね、正直。


■えー(笑)?

ken:まぁ本心だとは思うんですけど、あぁいうとき冗談とか言うから。でもたぶんすごいとこまで行っちゃったんじゃないですか? 確かに 15周年……その前からも思ってたんですけど……やっぱ言葉が刺さってくるし。今回もやっぱ言葉が刺さる歌だったんですよね。だからそこの巧みさっていう のを楽しんでんのかな? って気はします。


■確かに『Hurry Xmas』みたいにかわいらしい曲でも、言葉はすごく入ってくるし。

ken:何の要素がそうしてるかはわかんないですけど、“これはポップだろうな”“これはコアなもんだろうな”っていうものが、同じ土俵の上に並んで見える感じというか。それはおもしろい気分です、うん。


■では今回、ご自身の曲以外で、すごく育っていった曲とか3人に驚かされた曲といえば?

ken:最初に言ったとおり、デモの段階でカタチは見えてたんで、すごい変化した曲っていうのは、そこまでないかもね?


■じゃ、曲が出てきた段階でびっくりした曲は?

ken:やっぱ『Hurry Xmas』ですね(笑)。で、最初この曲はストリングスとかのアレンジは入ってなかったんですけど、ビートとかジャズの空気っていうのはもう入ってたん で、“おいおいやったことないじゃん”“ええ~っ?”みたいな(笑)。しかもhydeが“クリスマスソングだ”って言った瞬間に余計“そうかー”って。


■おもしろいんですけど、この曲、キリスト教的なクリスマスを全然感じないんです。

ken:はははは。


■もっと自由な架空の楽団っぽくて。

ken:そうですね。やんちゃさは求めてたし、パーティーとしてのクリスマスへの思いの曲だとは思うし。


■クリスマスの定石に落ちそうで落ちてないところに“やられたなぁ”と(笑)。あとほかにびっくりした曲ありますか? けっこう出てくる人から、出てくるべくして出た曲ばかりですか?

ken:あとは……『SEVENTH HEAVEN』もびっくりしましたね。


■完全に確信犯じゃないですか? 今回hydeさんは。

ken:かもしんないですね(笑)。最初は打ち込みでいきそうな空気っていうのが漂うデモだったんで、“そうきたか~”って。でもやっぱり バンドはすっごいアレンジを頑張るか、ロックだ! っていう何かを注入していかないと、それこそデスクトップのミュージシャンと一緒になっていく時代なの で。その辺は出していかないといけないなとは思いますね。

■それにしても、自分が楽しんで驚いてというのが大前提だとしても、その本気感がすごいんですね、今回。

ken:だから本気で臨まないと自分らが驚けない年になっちゃったってことじゃないですかね。


■いろんなことに対して×をつけることのほうが多くなるのかもしれませんね、“もう見た”みたいな。

ken:そうそう。“もう見た”“これ何年前にやった”“知ってる”ってなっちゃう。


■だからといって、やってないジャンルとかで新しさを出すんじゃなくて、自分も変化していってるということを素直に表現してる感じですね。

ken:まさにそのとおりですね。なんか言葉で説明できないんですけど……、驚くこだわりはここであって、見た目のここじゃなくてっていう気分はありました。……何もわかんないですね、この説明じゃ(笑)。


■(笑)。でもそれがL'Arc~en~Cielっていうバンドのユニークさだと思います。じゃあ最後にすごくカジュアルな質問を。アルバムもできて、プロモーションも忙しくて、またツアーも始まりますけど、kenさんは普段は何してるんですか?

ken:普段ですか? ……何してる?(スタッフに聞く)ギター弾いてるよね? とにかく弾いてる。


■そんなに探求を(笑)。

ken:ちょこっと練習するとダメなとこが見つかるんですよね。で、それをやって練習してるうちにまた見つかる、と。で、どんどん自分の思ってるところへ近づいて行くのが止まらないんですよね。それが楽しいんだと思います。うん。そんなんばっかりです。それと散歩ぐらいで。


■散歩はめい想できますからね。

ken:散歩、ぼんやりできますよね、うん。


■そうですか。ところで今、『Hurry Xmas』弾けます(笑)?

ken:大丈夫ですよ、もちろん(笑)。

2007年11月24日土曜日

Interview with - 奥田民夫

ロック・バンド、UNICORNのデビューから今年でちょうど20年。その20周年を祝うがごとく今年に入り、初となるソロとしてのベスト盤。井上陽水氏との共作アルバム。そして、この10月には、UNICORN/ソロ時代と2種、それぞれ2枚組のトリビュート盤がリリースされ、巷ではちょっとした祝福ムードに湧いている、奥田民生。そんな彼がオリジナル・シングルを久々に発売。民生=独特のマイペース・ノンポリ感漂う楽曲が数多なイメージがあったのだが、今回の新曲2曲は、それをくつがえす、妙にドッシリとした<期待を背負う男>感が楽曲全体からかもし出されている。奇しくも、ちょうど20年前にUNICORNがデビュー(1987年10月21日デビュー)した次の日、その新作の事を中心に色々と話を伺った。


■今年に入り、初となるソロとしてのベスト盤を出したり、2月には井上陽水さんとのアルバムを出したり、この10月にはトリビュート・アルバムが2種出たりしていますが、ご本人的にはこの盛り上がりをどう見ておられますか?

奥田民生:単純に嬉しいですよ。まあ、ベスト盤やトリビュート盤といった類は、自身の今までの音楽活動の“ごほうび的” に思っていて(笑)。トリビュート盤にしても、期待通りの人もいれば、意外なアプローチもあったりと、色々なアーティストの様々な解釈や消化を面白く聴かさせてもらったし。やっつけ的なものは一曲も無く、貴重な時間を僕なんかの為に、しかもみんな頭を使ってくれて、ホントありがたかったですね。

■ちなみに20年前は、今の自分はどうなっていると思ってました?

奥田民生:何も思ってなかったな。元々将来のことなんて考えるタイプじゃなかったし。“音楽活動は続けていきたいな・・・”とは思っていたけど、それに際して特に具体的なビジョンも無く。運動選手みたいに選手生命も無いですからね、この仕事は。それこそ当時は、もう 3日後までのスケジュールしか気にしてなくて(笑)。その繰り返しですよ、この20年。得たものもあれば、失ったものもあったし…。

■その得たものとは、例えば?

奥田民生:体重が増えたり(笑)。最初の頃出来ていなかったものも、徐々に出来るようになったり。色々な体験や経験をして、色々なものが見えたり、分かってきましたからね。

■逆に失ったものは?

奥田民生:やっぱり体力かな(笑)。あと、肌の艶や、爽やかな汗の感じとか(笑)。

■とは言え、非常に良い歳の取り方をしてますよ、民生さんの場合。遊ぶ時は遊び、キメる時はキチンとキメる、みたいな。

奥田民生:常にメリハリをつけようとは意識していて。音楽を仕事にしている以上、例え苦労していても、苦労している様に見せちゃいけないし。自分的には「これはこんなに頑張って作りました」と語るタイプじゃないですからね。それを言っちゃうと、そういった先入観が楽曲に付いちゃうし。僕はそれがイヤで。なので、どれも「プップと出ました」と、あえてニュートラルな姿勢で語ってます。

■確かに今までの民生さんの楽曲には、そのようなスタンスの楽曲が多かったんですが、それに比べ今作の「無限の風」、「明日はどうだ」と、今までの民生さんの楽曲には見られなかった、いわゆる<男の背負うもの>を感じさせる楽曲が並びましたね。

奥田民生:今回はたまたまですよ、たまたま。今、並行して作っているアルバムは、相変わらずこの2曲をくつがえす曲も沢山あるし(笑)。なので、「今はこういったモードなんですか?」と聞かれると、「全然」と答えるしかなくて(笑)。アルバムを聴いたら、いつも通りのバランスに、きっと、“な~んだ、やっぱり”と思いますよ。特に今回の「無限の風」の方は、星野(仙一=野球日本代表監督)さんに向けて作りましたからね。これで楽曲がふざけてたら、星野さんに怒られますから(笑)。

■では、この曲は星野JAPANに捧げているところも?

奥田民生:ありありですね。“星野さんはこんな男なんじゃ?”と僕なりの星野像をイメージして作りましたから。なので、僕が作って歌ってはいるけど、感覚的には僕だけの歌とは思ってなくて。

■とは言え、独特の民生さんの歌い方も良い感じにサウンドに絡んでいて、なんとなくフツフツとしたエモーショナルさを感じたんですよ。

奥田民生:歌に関しては、あまり着飾ったりテクニカルな歌い方が好きじゃないんで、あえていつも通り朴訥な歌い方をしてみました。サウンドにも非常にマッチしていると思うし。

■演奏面も全体的にドッシリと坦々としつつ、所々エモーショナルになる。そのメリハリも効いてますね。

奥田民生:ギターをもう一本入れるというスタイルは、ここ最近ほとんどとってないんで、曲の在り方としてはシンプルにせざるおえない所もあって。そんな中、メリハリをつけたら、こんな形になったというか。“ライブではこうなるだろう”も想定して作ったし。“このフォーマットで!”と決めたら、そのフォーマットで出来る最大限のプレイとアレンジをした結果です。

■カップリング曲の「明日はどうだ」ですが、これは聴いていて気が楽になる人も多そうですね。

奥田民生:内容的にはあまり無いですよ(笑)。“なんだ、結局は行き当たりバッタリじゃねぇか!”って、ツッこまれるのがオチの曲で。自分的にも、“激しい演奏の中、こんな優柔不断なことを歌わなくても…”って思いますもん(笑)。“結局、決まってなくてもいいんじゃないの?”って歌ですから。“右か左かハッキリせい!”って人には受けが悪いでしょうね(笑)。

■こちらはかなりの疾走感とドライブ感のある曲ですが、なんでもこの曲はニューヨークで録られたとか?

奥田民生:そうなんですよ。ここ最近ニューヨークで録っていて、去年スティーヴ・ジョーダンのバンド“The Verbs”を一緒に演った面々と録りました。そのThe Verbsと並行してのレコーディングだったんで、ノリノリ感は上手く出てるんじゃないかな。レコーディングもサクッと早くて。曲に向かっての一直線感があって、かなり一丸性を感じてましたからね。

■で、3曲目にはPUFFYの2人に提供した「オリエンタル・ダイヤモンド」のデモ音源が…。

奥田民生:この曲こそ、「明日はどうだ」のスタジオや参加メンバーの豪華さとは真逆で。僕が1人で自宅で全ての楽器からエンジニアリングまでやりました。

■自宅ですか、これ?

奥田民生:もう、今やここまで録れるんですよ。“機材の進歩は凄いなぁ”と。向こう側の注文的も、“派手な曲を書いてくれ”だったんで、疾走感や荒々しさを前面に表してみました。まあ、ここまでライブ感を出したのも、“こんな感じだよ”というのを上手く伝える為で。

■作詞は井上陽水さんですが、彼の今回の歌詞を歌ってみていかがでした?

奥田民生:言葉の意味がどうであれ、歌った時のスピード感と歌っての気持ち良さは相変わらず凄いなと。もう、歌詞カードを見てもしょうがないんですよ、この曲は。是非、曲自体を聴いて欲しい。まあ、僕もよく韻は踏みますが、僕の場合は韻というよりは駄洒落。いや、おやじギャグの一種ですからね(笑)。

■最後に今作の聴きどころを教えて下さい。

奥田民生:やはり、日本、ニューヨーク、そして自宅と、全部場所も違うし、メンバーも違う所ですね。全て1人の人間から生まれた音楽ですが、そこに携わる人達や場所によって、こんなにも各曲違うところを是非聴いて欲しいですね。